きのう、図書館から『バーディ』というアメリカ映画のサウンドトラックCDを借りてきました。
しかし、学芸員Kはこの映画のことはまったく知りません。
では、なぜ借りてきたか?
ピーター・ガブリエルの作曲した『バーディ』の音楽が、
香港映画『男たちの挽歌』(1986年 原題「英雄本色」。写真はVCDジャケット)で
流用されている!ということを、知ったからです。
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当ブログ5月31日付で『ドラゴンへの道』主題曲盗作疑惑を書いたとき、
Googleで調べてみたら、あるサイトの掲示板で香港映画のサウンドトラックのことが
話題になっていました。で、見てみたら、
「『男たちの挽歌』だって、名義はジョセフ・クーだけど、実際は、『バーディ』の音源を使っている」
というような趣旨の書き込みを見ました。……なにッ!?
そこでその音楽を聴きたくなり、近所の区立図書館のサイトで資料検索したら、
運良く『バーディ』のサウンドトラックCDがありました。
注文したら、すぐに図書館から 「予約のCDを用意できました」 とメールがきました。
さっそく借りてきました。(写真)
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さて、学芸員Kがこの『バーディ』のCDに入っていることを望む曲はただひとつ。
『男たちの挽歌』の、重要なシークエンスで流れる音楽です。
この映画を観た人なら、「ああ、あれか」と、音楽が頭に思い浮かぶ人も多いと思います。
そのシークエンスとは。
マーク(チョウ・ユンファ)が、相棒ホー(ティ・ロン)を裏切った台湾の組織をやっつけるために
組織のボスが宴会をやっている料亭に単身で乗り込む。
料亭で、マークはボスをはじめ全員を2丁拳銃でバッタバッタと倒す。
いったん静寂。ここから音楽が流れて──
深手を負ったボスが、倒れた体勢のままマークの脚を背後から打ち抜く。
マークは反撃してボスの息の根を止める。
──と、ここまで流れる音楽。
このシークエンスは『男たちの挽歌』の見せ場中の見せ場のひとつです。
『バーディ』から借用しているのは、多分、この場面に使われた曲のことだろう
ということを、『バーディ』のサントラCDを聞く前に勝手に決め付けていました。
なぜなら、以前、『男たちの挽歌』のサウンドトラックのレコードやCDなんか出ていないのに
日本のTVニュース番組でこの曲が流れたことがあったからです。
また、のちに『男たちの挽歌』のオリジナルスコアCDが出たので手に入れて聴いたら、
本来なら曲目からははずせないこの曲が抜けていたのです。
で、この『バーディ』のサントラCDを聴いてみました。
………!
やっぱり、この曲が入ってました。長年、手に入れたいと思ってた曲でした。
10年ほど前、まだインターネットが普及する前、ニフティのパソコン通信時代に、香港映画の
会議室(今で言う掲示板)で学芸員Kはこんな書き込みをしました。
「最近、テレビのニュース番組で、『男たちの挽歌』の音楽が使われているのを聞きました。
マークが料亭に殴りこみにいって敵をやっつけたときに流れる音楽がありますよね。
あの音楽が流れました。でも、『男たちの挽歌』のサントラ盤は現地でも出ていないはずです。
なぜ、この音楽が音源で存在するのか不思議です。フリーの音源か何かなのでしょうか?」
こんな感じの書き込みをしたら、ある人からの書き込みで
「それは興味深い話ですね」というようなレスがありました。
しかし、そのとき、学芸員Kもレスを付けてくれた人も
「実はなんのことはない──香港映画音楽の王道──他の映画から借用してきたのだ」
なんていう発想はありませんでした。ものすごく重要な見せ場のシーンで流す音楽が、
実は他の映画のサウンドトラックからのそのまんま借用、っていう
この日本人の理解の範ちゅうを超えた割り切り方。
『男たちの挽歌』は、大作ではないかもしれませんが、当時の香港映画にあっては、
特に低予算でもないはず。
問題はこの借用が、正式に許可を得て借りたものか、無断借用か、ということになりますが、
さて、どうなんでしょうか? これが70年代の低予算映画なら明白なんですが。
『男たちの挽歌』は、のちに日本のT社から、マニア向けにオリジナルスコア盤が出ました。
手に入れて聴いてみると、ほとんどサウンドトラック盤といってもよいほどの忠実な内容で
満足したのですが、前述のとおり今回話題にしたシーンの音楽がスッポリ抜けていて、何で?と、
ガッカリしました。抜けている理由は、言うまでもなくその曲が他の映画からの借用だったから
入れることができなかったということなんだと思います。
そして、今回の『バーディ』でついにその曲に出合いました。
この話題、いろいろ検索してみたら、『男たちの挽歌』ファンやピーター・ガブリエルのファンの
間ではけっこう常識になっているようにも見受けられます。
この『バーディ』のサントラCDは絶版のようですが、機会があれば聴いてみてください。