きょうテレビ東京系でチャウ・シンチーの『少林サッカー』が放送されます。
この映画が日本でロードショーされたとき、まだ息子が小さかったので
カミさんと交代でひとりづつ、今はなき大映画館の渋谷パンテオンに行って観ました。
この映画、もちろん観た人は多いと思いますので説明は野暮ですね。オモシロさ抜群!
……だが少し、気持ち悪いというか、しっくりこないところがある。
それはこの映画の舞台。香港ファンなら気が付いた人も多いと思いますが、
あの映画の舞台は香港じゃない。でも、なんかそこはかとなく香港風の景色。
タイムズスクエアが出てくるけど、香港の銅鑼灣のタイムズスクエアじゃない。
中国本土でも香港でもない、なんというか「無国籍」な状態なので、そこんとこがどうも
気持ちがよくない部分があった。映画館でこの映画を観ながら、
「中国本土だろうが、いったいどこだ?」と頭の片隅にひっかかりながら観てました。
このことはきのう挙げた『香港映画の街角』という本でも書かれています。チャウ・シンチーを取り上げた章で、彼と、彼の映画が香港から外に飛び出ていく過程を、一連の作品を通して評論しているのですが、『少林サッカー』についてこんなことが書かれています。

 「これまでシンチーの同時代コメディを常に濃密に彩っていた「香港色」が『少林サッカー』において急速に薄まっているという事実を無視するわけにはいかない。シンチーが驚異の180度開脚を見せてたたずむ冒頭の街角。それがどこかを特定できないことが、いままでチャウ・シンチー映画を観続けてきたファンをとまどわせずにはいない。一大繁華街コーズウェイベイ(銅鑼灣)の時代広場前(タイムズ・スクエア)に似ているが、何か違和感がある。「ここにいると空や地面などというものがあることを忘れ」るとまで評される、あの窒息感をもよおす密集空間とは異なるゆとりがただよっているではないか。事実、それは同じタイムズ・スクエアとはいえ上海のタイムズ・スクエア前にロケして撮られた場面なのだ。」(P.251)
上海だったのか! 学芸員Kが上海に行ったときはこんなものまだなかった。
そして、著者はこの文に続けて、この映画によってチャウ・シンチーが香港という「地元」から
外へ離陸して、中国から世界へ版図を広げたことを実感する、と語っています。
『少林サッカー』つながりでもうひとつ。先日行われたサッカー親善試合「日本 VS マルタ」を
観て気が付いたんですが、あの試合が行われたサッカー場、なかなか工夫されてました。
ドイツで行われた親善試合の日本対マルタだから、観客の多くは日本人サポーターで
観客の入りはだいたい全座席の2割ほどだったと思います。つまり、席はガラガラ。
しかし、それなのに、それほど観客席が空いている感じがしなかった。
で、よく見たら、観客席のイスが、赤とか黄とか青とか黒とかいろんな色で、しかも、一定の
パターンではなくてアトランダムに並べてある! だから試合を普通に見ていると、バックに
見える観客席が人で埋まっているように見えてしまう。しかも選手を望遠でアップでカメラに
とらえたときは、望遠だからバックがボヤけて、ちょっと見には、満席に見える! いやあ、よく
考えてありました。(実は日本の競技場にもこんな工夫がされているところがあるのか?)
で、これを見て、学芸員Kは『少林サッカー』の最後の方のサッカーの試合の場面を
思い出しました。
あの試合のロケ、たくさんの観客をエキストラを使って客席を埋めているのですが、それは
一部のシーンだけで、たくさんのシーンでは、よく見たら空いてる座席に、セーターやシャツや
いろんな色の紙(?)などを置いて、観客がいるように見せかけてるのです。気が付きました?
この記事アップするの遅かったから、間に合うかどうかわかりませんが、きょう9時からやる
『少林サッカー』、ここんとこも、注意して観てみてください。
あしたからいよいよワールドカップですね!!