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なにゆえこのブログでアメリカ映画 『ブレードランナー』 か、といえば、私にとって香港と『ブレードランナー』は切っても切れない関係だからです。
この映画を観た方は多いと思いますが概要を。こちら→(「ウィキペディア 『ブレードランナー』)。1982年製作。監督はいまや超大御所のリドリー・スコット、主演はハリソン・フォード。舞台は2019年の近未来のロサンゼルスなのですが、漢字やカタカナが入り混じった街が出てきて、これが何か香港を思わせるのです(新宿歌舞伎町だという人もいますが)。
ブレードランナーが香港的、とか、香港がブレードランナー的、というのは1982年の公開当時から言われていたようですが、私はそんな評判は知らないまま、香港に行く前に池袋の名画座でこの映画を観ました。で、映画を観たときに自然と、「まだ見ぬ香港にはこの映画の都市に似た世界があるんじゃないか」と思ったのでした。
そこで、初めて香港に行くという前日、私は、ブレードランナーのLPレコード(当時は作曲担当のヴァンゲリスの主張によりサントラ盤がまだ出ていなかったので、オーケストラ盤)をカセットテープに録音しました。そして香港にそのカセットを持って行って、泊まったホテルの窓からネイザンロードを見下ろして聴いたりしていました。
香港に行ってみて、そこにはまさしくブレードランナーの世界があった(と、私は感じた)のですが、その後、私はこの映画のサントラ盤が出ないことを不満に思い、自分で『ブレードランナー』のVHSソフトから音楽部分だけ抜き取って録音し、これをまた香港に持っていっては夜のスターフェリーに乗り込んで、オープニングシーンの音楽をウォークマンで聴きながら、中環の高層ビル群を眺めたりしていたのでした。いま書いてて自分でもオタクだなあと思います。さらに言ってしまうと、録音したそれぞれの音楽に題名を付けていました。「上環 午前2:00」とか、エンディング曲には「香港1997」とか。映画の内容にはまったく関係ない題名。で、カセットテープのラベルに書いた全体のタイトルは「迷走香港」。思い返すと赤面ですが一人で盛り上がっていました。
その後、サントラ盤が出ないことにどこぞの国のマニアが業を煮やしたのか、映画のサウンドトラックのマスター音源からダビングしたという、まさしく「本当のサントラ盤」ではあるが、しかし「海賊版」という、「オフワールド盤」というCDが世界に出回りました。どういうルートでマスター音源が外部に漏れたのか不思議です。
そして90年代半ばについに正式なサウンドトラック盤がリリースされました。しかしなお現在でも「オフワールド盤」にはプレミアが付いた状態で、ヤフオクなどでも数万円で出品されています。なぜこれにプレミアが付くかといえば、正規のサントラ盤CDは作曲家ヴァンゲリスの意図により、収録内容の一部が、映画のイメージから逸脱した内容になっているからです。映画音楽ファンというのは、私もそうですが、基本的には映画のオリジナルスコアに忠実で、オリジナルどおりの楽器の使用による、フィルムの「サウンドトラック」に忠実な音楽を求めます。しかしヴァンゲリスは、それとは真っ向から反対の考えらしいです。彼の考えによれば、映像なしのCDなどに収録するのは「独立した音楽」であり、元の「映画のBGM」とは違う、ということらしいです。
わたしは情報不足でこの「オフワールド盤」を買い逃したのですが、後に似た内容のルーマニアでリリースされた「サントラ盤」を渋谷のサントラ盤専門店「すみや」で見つけてたしか5000円くらいで手に入れました。しかしこういう有象無象の「サントラ盤」の数々が出た後も、香港で聴くには、私は自分で作ったカセットテープの方を実は気に入っていました。
『ブレードランナー』は封切り公開当時は不当たりで、興行的には失敗と言われました。しかし、その後再上映やビデオなどでブレイクし、多くのマニアが生まれました。また、ここで描かれる未来図がのちの多くのSF映画に影響を与えました。この映画には試写版を含めて様々なバージョンがあり、それがまたマニアの探究心をくすぐっています。私はこの映画自体に対してはマニアというほどのものではなく、ライト級のファンだと思っています。
この映画が公開されてから25年が経ちました。『ブレードランナー』は製作された1982年の時点で、37年後の2019年を舞台にしています。時間的には、すでに現在、舞台設定の2019年に対して折り返し地点を過ぎています。2019年まではあと12年です。現実の世界では我が日本のホンダや村田製作所のロボットが現在の世界最先端ロボットというなら、映画に出てきたようなレプリカント(人造人間)が登場するには、残り12年では時間がとうてい足りません。おそらく実現しない。手塚治虫が描いた鉄腕アトムが2003年に実現しなかったのと同じです。あと12年後のロサンゼルスで、パトカーが空を飛びまくっているということもないと思います。
で、前置きがやたら長くなりましたが、『ブレードランナー』製作25周年を記念して、4つの歴代全編集バージョンと、今回新たに編集された2007年版ディレクターズカットの「ファイナルカット」、メイキングやドキュメンタリーなどをプラスした、DVD5枚セット(本国ではブルーレイ、HD-DVDもあり)が限定販売されることになりました。というのが、上の写真。「アルティメット・コレクターズ・エディション(日本版のタイトルは「アルティメット・コレクターズ・エディション・プレミアム」)」。予約販売で12月にリリースされます。
このセット、DVDセットが18352円(アマゾン)もします。しかし、調べてみるとアメリカ本国版DVDは7387円(輸入版サイト)。半額以下の価格です。しかも日本版では販売されない次世代メディアのブルーレイやHD-DVDでも79.98ドル(9357円)で手に入ることがわかりました。本国版にも日本語字幕が収録されるので、こっちを選ばない手はありません。(ただし、日本版DVDには日本語吹き替えが付きます)
「ファイナルカット」とかBOXとか、こういうセットの限定販売はいかにも商売的だなあと思いつつも、本国版のブルーレイを予約しました。HD-DVDとどっちにするか迷いましたが、ブルーレイが今後生き残ることに賭けました。それにしてもメディアの移り変わりは激しいです。DVDがもう旧メディアになりつつあるのですから。
こういうときに比較して思うのは、日本のソフトが相変わらず高いな、ということです。
ディスクのみの場合、ブルーレイ、HD-DVDだと、日本版は「ファイナルカット」版1枚のみで3686円(アマゾン)ですが、本国版はこの「ファイナルカット」版を含む歴代編集違い5バージョンとボーナスディスクの5枚ディスクセットで3977円(輸入版サイト)です。日本版制作上のコストや販売数の事情もあるでしょうけど、あまりにも価格差が大きすぎます。日本版を扱う当のアマゾンのコメント欄にも「日本版が高いから輸入版を予約した」という投稿がありました。
ちなみに、この映画、私の個人的な香港をからめた勝手な「熱い想い」とは別に、もともと香港とは大いに関係があります。
実は 『ブレードランナー』 は、香港の映画会社ショウブラザースの総帥、邵逸夫(ランラン・ショウ)の出資によって作られた映画なのです。映画の国籍というものがどういう条件で決まるか私はよくわかりませんが、この映画の場合は、正確に言うと表記上としては「1982年製作 アメリカ・香港」となります。
でも、出資が香港資本だからこの映画のなかのロサンゼルスがホンコン的になった、ということではないようです。
さあて、予約はした。12月に『ブレードランナー』のブルーレイディスクが届く。あとはブルーレイ・プレーヤーと大型ハイビジョンテレビを買うだけだ(笑)。
・関連ニュース(日本版)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070903/whv.htm
・日本版
Amazon.co.jp
・本国版
http://www.fantasium.com/main.phtml
(「blade runner」で検索すると出ます。日本版とはセットのタイトルが違うので注意<日本ではディスクのみのセットにも「アルティメット」のタイトルが付いていいますが、本国版は付きません>。取引に関してのリスク等は各自のご判断で。また輸入版のDVDはリージョンコードに注意してください)