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 おととい書いた、香港の映画の「上映許可証」の話題で思い出したこと。
 香港が中国に返還される少し前のことです。
 佐敦だったか尖沙咀の地下鉄駅の改札口近くで、待ち合わせで知人が来るのを待っていたときのことです。
 ヒマだったので、私は、壁に貼ってあった地下鉄利用の規則を細かく書いた紙を見ていました。いわゆるポスターなんかではなく、オフィシャルな文書です。生命保険の規約みたいに、けっこう細かい字で書かれてありました。
 中文と英文の併記でした。中文がサッパリな私は、得意でもないがそれでもまだマシなほうの英文を読み進めました。「車内での飲食は罰金何ドル」などの禁止事項やそのほか、かなり細かいことがびっしりと書かれていました。
 最後の一文が印象的でした。英語で再現できないのが情けないですが、読んだ記憶では、こうです。
   「この規則書において、英語と中国語で齟齬があった場合は、
    英語で書かれてあることを優先する」
 たしかこんなことが、書いてありました。これを見たとき、「ああ、やっぱり香港はイギリスの植民地なんだな」と思いました。
 この規則書、英語で作ってからそれを中国語に訳したということ? 英語と中国語に食い違いがあったら英語に従えということか。とにかく英語ベースということです。こういうオフィシャルな文書においては英語が中国語の上に立つということを、庶民の足である地下鉄の、その規則書の中の最後の一文で思い知らされました。
 これと、時期的には同じころだったと思うのですが、1996年のアトランタオリンピックのとき、私はたまたま香港に行っていました。
 で、このオリンピックで香港の選手が史上初の金メダルを獲ったので、テレビを見ていた私は、表彰台でどんな音楽が流れるのかと思ったら、当たり前のようにイギリス国歌「God Save the Queen」が流れたので、「そうだよな、やっぱりイギリス領だもんなあ」と、そのとき拍子抜けしながら今更ながらに納得させられたのを覚えています。
 何というか、せっかく金メダルを取ったのに、宗主国の国歌なのかよ、ちょっと悲しいな、と思ったのです。
 ただ、本音を言えば、現在の香港で中国国歌「義勇軍進行曲」が流れるのも、実はあんまり好みではありません。正直言うと、永遠の香港観光旅行客・学芸員Kの勝手で無責任な感想としては、香港の街にユニオンジャックの旗がはためいていた植民地時代のあの雰囲気は、極めて捨てがたい大きな魅力でした。これに同意してもらえる人は多いと思います。
 で、話は脱線しますが、私は世界の国歌を集めたCDをたまに聴きます。中国の国歌はかなり好きです。ほかにロシア、ドイツ、イギリス、フランスなど大国の定番どころの国歌が気に入っているのですが、しかしいちばん好きなのはイスラエル国歌です。その曲の旋律に、どこかイスラエルの歴史と国家の背景を感じてしまいます。
 ウィキペディア 「イスラエル国歌」
 (ページの下に音楽が聴けるリンクが張ってあります)
 追記:ところで、地下鉄の規則書、香港のことですから今でもバイリンガルなのかなとは思いますが、まさか英語が優先ってことはないですよね? 返還後、確認したことがないのでそこのところ不明なのです。ご存じのかたは教えてください。