今回も、超小ネタ。
いまBSジャパンで「俺たちの旅」という古いドラマをやってます。
録画しておいて気が向いたら見ています。
このドラマは、もとは日本テレビで今から36年も前の1975年~1976年に放送されたものです。
中村雅俊、田中健、津坂まさあき(現・秋野大作)主演の青春モノ。今の目から見たら物語がちょっと甘いところもあるけれど、青春ドラマの金字塔とも言える名作。
きょう私が見たのは、第39話「ニッポンの将来はどうなりますか?」(BSジャパン5月11日放送分)。
見ていたら、この回にはゲスト出演で若々しい中尾彬と柴俊夫が出てきました。
それが上の写真。
一流商社マンの中尾彬と、その商社の御曹司で部下の柴俊夫。
YouTubeを見たら、この第39話の、まさしくふたりが出ている場面が、アップされていました。
画面に並ぶ、若き日の中尾彬と柴俊夫(上の映像では4分50秒あたり)。
テレビの画面にふたりが並んで出演しているところを見ていて、
私は「あっ!」と気づいた。
そうか、このふたり、ドラマで共演していたのか。
中尾彬 と 柴俊夫。
中尾彬 と 柴俊夫 と 、ブルース・リー。
中尾彬 = ブルース・リー = 柴俊夫。
この図式でピンときた人は、なかなかのブルース・リー マニアです。
このご両人、いずれも、ブルース・リー映画の日本語吹替版で、ブルース・リーの声をやっているのです。
中尾彬が「ドラゴン怒りの鉄拳」のリー。
柴俊夫が「ドラゴンへの道」のリー。
中尾彬と柴俊夫、ふたりが「俺たちの旅」で共演したときは、お互い、あとで自分たちがブルース・リー映画の日本語吹替で競演することになるとは思っていなかったと思います。
ウィキペディアで見てみたら、ドラマ「俺たちの旅」は1975年10月から放送開始です。ということはこの第39話は1976年に製作・放送されたことになります。
それでいけば、このドラマの出演からほどなくして、まず、柴俊夫が、ブルース・リー香港凱旋主演第3作目の「ドラゴンへの道」の吹替をしたということになります。日本テレビの水曜ロードショー。
一方、それからしばらくして今度は中尾彬が、第2作目の「ドラゴン怒りの鉄拳」でブルース・リーの声をやったということになります。NET(現テレビ朝日)の「日曜洋画劇場」での放送。
ちなみに「ドラゴン怒りの鉄拳」は、初放送のNET版とは別に、のちにTBSの「月曜ロードショー」でやった、津嘉山正種の声のものもあります。
(探しましたが、「ドラゴン怒りの鉄拳」の吹替版はYouTubeでは見つかりませんでした)
と、いうことで、同じブルース・リーなのに作品によって吹替の声が違いました。
それぞれ、映画の中に出てくる主人公のキャラクターに合わせて、声を決めたのか。
ちなみにブルース・リー主演の、あと2作の声は、
香港凱旋第1作目の「ドラゴン危機一発」のブルース・リーの声が、仮面ライダーの藤岡浩、。
そしてアメリカとの合作による「燃えよドラゴン」のブルース・リーの声は、「宇宙戦艦ヤマト」の古代進の富山敬と、谷口節(DVD版のみ?)です。
YouTube「ドラゴン危機一発」藤岡浩、日本語吹き替え版
ごく初期のゴールデンハーベスト作品。素朴な映画……。なんか学生の作った自主映画みたいです。
ところで私は、ブルース・リーの吹替の声で、実現してほしかったものが1つあった(過去形)。
「燃えよドラゴン」のブルース・リーの声を、山田康雄にやってもらいたかったということ。
山田康雄は、あの「ルパンⅢ世」のルパンの声です。
話は少し脱線しますが、当時のブルース・リー映画の、劇場公開時のオリジナル音声は、香港のゴールデンハーベストやコンコルドピクチャーズが作った「ドラゴン危機一発」「ドラゴン怒りの鉄拳」「ドラゴンへの道」は、広東語ではなく北京語での公開でした。
当時の香港映画は北京語音声が主流。で、香港映画はのちのジャッキー・チェンの映画もそうですが、オリジナルの北京語や広東語の音声も皆、他人の声による吹替でした。
ただしブルース・リー映画の日本での劇場公開版は、「中国語だと日本人にはなじみが薄い」という配給会社の判断で(要はカッコ悪いと判断したのか?)、輸出用の英語吹替版が公開されました。
いずれにせよ、「ドラゴン危機一発」「ドラゴン怒りの鉄拳」「ドラゴンへの道」は、劇場公開時の北京語版も英語版もすべて他人の声による吹替。
唯一ブルース・リーの肉声が聴けるのは、アメリカとの合作による「燃えよドラゴン」の英語版です。
その「燃えよドラゴン」のブルース・リーの声を山田康雄にやってもらいたかった。
山田康雄の、ルパンの声以外で有名なのは、映画「ダーティー・ハリー」のクリント・イーストウッドの声。
一方、これがDVDに入っている谷口節の日本語吹替版。(ただし、この映像は加工されてBGMが入っています)
同じシーンの英語オリジナル音声。
これがブルース・リー主演映画唯一の肉声映画、「燃えよドラゴン」のブルース・リーの英語の音声。
ブルース・リーの声は、どっちかというと、軽い。肉声は。
私は、「燃えよドラゴン」のブルース・リーの肉声からいって、吹替をやるなら、山田康雄がイイと思ってたのです。
吹替というのは、けっしてその俳優の物マネや声マネではないとは思うが、ブルース・リーの肉声の雰囲気に山田康雄の声のイメージが合っていると思ったのです。
吹替の人選をするときは、俳優の声に似せるのではなく、映画の物語や役柄に合った人を選ぶのだと思います。
この映画でストイックな役柄を演じるブルー・ス・リーの声は、抑えたトーンで人格者っぽく、ということで富山敬や谷口節となったのか。物語の役柄でいったら、合っているのかもしれない。
でも、この「燃えよドラゴン」には、声の軽い小さな東洋人が、いざとなったら大暴れするという、そういうイメージが、欧米など海外ではあったような、気が、私は、する。
そういうイメージで、私は、山田康雄の声の「燃えよドラゴン」を見てみたかった。もちろん、ルパンでもクリント・イーストウッドでもない、山田康雄氏の解釈によるブルース・リーの声で。
そんな私の望みもかなえられないまま、山田康雄さんは故人となりました。
ルパンと同じく、後継者の栗田貫一に「燃えよドラゴン」のブルース・リーの声を挑戦してもらいたい……、と思ったが、やっぱりそれでは無理。山田康雄にやってほしかった。
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