ニュースです。

こちら
http://www.jiji.com/article?k=20120401april&fool

念のため以下コピペしておきます。

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九龍国際空港」の計画案了承
2022年以降、香港は “2空港体制” へ

中国の「航空署合同会議」が3月31日、広州市で開かれ、中央機場検討委員会(中機委)は香港・九龍の旧・香港国際空港(啓徳空港)跡地に「九龍国際空港(KIA)」(仮称)を設置する計画案を大筋で了承した。

会議終了後、同会議の李家范議長が会見で計画案を明らかにした。計画では2022年の開港を目指す。KIAが開港すれば、同年以降、ランタオ島の香港国際空港とあわせて香港は「2空港体制」となる。

香港国際空港は2012年2月末日現在、開港時に定めた1日の離着陸回数の上限枠に対して約70便超過している。このため第3滑走路を増設する計画で調整に入っていた。

しかし今年に入り中機委の陳徳彬委員(広東省航空署機場施設計画審議官)が、1998年まで九龍市街地にあった啓徳空港の跡地利用を趣旨とする計画案を同会議に提出。この計画案は、啓徳空港が市街地の近くに位置し利便性が高かったことに着目したものだった。複数の委員がこの計画に賛同し、一転、啓徳空港跡地へのKIA設置の選択肢が最有力候補となっていた。

ただし、すでに啓徳空港の滑走路跡地は、大型客船ターミナルや公営住宅、学校、政府庁舎が建設される予定で計画が進んでいる。そのためKIAは厳密には跡地への建設ではなく、滑走路については旧空港の滑走路に平行する形で敷設する(下図)。空港施設も一部は跡地周辺に隣接して設置される。

KIA周辺の九龍城地区は商業施設やアパートなどが密集していることから、環境への配慮として1日の離着陸数は当面、現空港超過分の70便程度に抑えられるという。さらに「国内便での使用はない」(李議長)としており、中国本土との「国内路線」の運行はない模様だ。

計画書には、香港国際空港とKIAの間を 総2階建てのリニアモーターカーの地下鉄により所要時間5分でつなぐ案も明記されている。

kia_plan_cad01_a.jpg<図>旧香港国際空港(啓徳空港)の滑走路跡地と平行する形で敷設されるKIAの滑走路=計画書「九龍国際機場計画案」より

【2012年4月1日 香港・事時】

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詳細続報(解説記事)もあります。

こちら
http://www.jiji.com/article?k=20120401usodesu-gomenne

同じく以下コピペ。

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<解説>九龍国際空港は 将来を見据えた「国内空港」か

香港の九龍に新しい国際空港を建設することがほぼ確定的となった。中国の航空署合同会議が3月31日、広州市で開かれ、中央機場検討委員会(中機委)は香港・九龍の旧香港国際空港(啓徳空港)跡地に「九龍国際空港(KIA)」(仮称)を設置する計画案を大筋で了承した。

香港の空港をめぐっては、離着陸数の増加に伴う許容超過を主な理由として、1998年に九龍の啓徳空港からランタオ島の現空港に国際空港を移転した経緯がある。しかし、香港の市街地へのアクセスの良さなど、利便性の高さを特徴とした啓徳空港の閉港を惜しむ声はいまだ根強く、復活を訴えた署名活動が2010年になっても一部で行われていた。

今回の計画で、事実上この啓徳空港が復活することになる。だが啓徳空港の滑走路はすでに一部が民間企業に売却されており、また仮に滑走路を回収したとしても耐用面から安全性が危ぶまれる。そのため、計画では旧滑走路の横に平行する形であらためて滑走路が新たに設置される。

KIAの滑走路は啓徳空港同様にビクトリア湾に突き出して敷設される。着工は2016年を予定。建設に当たっては、コストをほぼ半減できるプレ・コンストミックス工法を採用する。同工法は滑走路の路面に、摩擦力の高い高剛性樹脂パネルを約20万枚使用。コンクリートやアスファルトを用いないため、工期も従来に比べ約4割短縮できるという。この工法により、滑走路は2019年半ばの完成を見込む。ただし、空港ビルなど諸施設の建設予定地買収に難航が予測されることから、実際の開港は滑走路完成から最短でも3年後の2022年を目指す。なお、空港ビルは便数の少なさに応じたものとして必要最小限の規模に抑えられ、計画書では「中国本土の地方空港並みの簡素なものにする」と記されている。

急旋回での着陸も復活

旧空港の啓徳空港は都市部に近く利便性が高かった一方、背後に山が迫る立地のため着陸の際にはまっすぐ滑走路に入ることができなかった。そのため滑走路への進入直前、山を避けるルートで急角度の右急旋回を余儀なくされた。航空機は通常、空港に着陸する際に自動操縦で着陸態勢に入る。しかし急旋回が必要な啓徳空港への着陸では、この自動操縦を解除して手動操縦にしなければ滑走路に進入できなかった。手動操縦によって、大きな航空機がその挙動としてはあり得ぬほど極端に機体を右に傾けながら急旋回させる。空から香港に入る機上の人間は、乗員も乗客もみな等しくこの危険の伴う急旋回進入の洗礼を受けた。

ところが、通称「香港カーブ」と呼ばれるこの急旋回での滑走路進入を、「他の空港では味わえない醍醐味」と捉える観光客や航空マニアがいた。このため啓徳空港は、閉港後、時間が経つにつれ当時を懐かしむ人々の間で伝説的な存在となっていった。

啓徳空港跡地に隣接するKIAでは、この急旋回進入も必然的に復活することになる。しかし啓徳空港時代の飛行ルートだった空港の北西部では、現在、東亞改革大廈(アジアルネサンスビル、135階)など複数の再開発プロジェクトが進んでいる。啓徳空港時代の「建造物高さ規制」が撤廃されたためだ。したがってKIAへの進入ルートは、高層ビル建設計画のない北東部の上空を使用。同時に北東部のエリアでは建造物の高さ規制を再度設ける。従来の北西部ではなく北東部からの飛行ルートとなるため、航空機がKIAに進入する際の「香港カーブ」は、啓徳空港時代の右旋回とは逆の左旋回となる。

2019年の新滑走路完成後、2022年開港までのブランクとなる3年間は、急旋回進入に慣れていない各国航空会社のパイロットを招聘し、随時、急旋回進入の訓練のために新滑走路を臨時使用するという。訓練は急旋回進入に慣れた地元香港のキャセイパシフィック航空の主導により行われる。啓徳空港時代を知る同社のパイロットOBが指導に当たる予定だ。

3月31日の合同会議後の記者会見では、記者団から「啓徳空港時代の右旋回とは逆の左急旋回は、いくらキャセイ航空のパイロットでも慣れていないのだから相当危険ではないのか」との質問が出た。これに対し、KIA計画案の提出者である陳徳彬・中機委委員は「オリンピックの陸上競技のトラックは 全部左回りだ。人間本来の運動感覚からして左旋回のほうが安全面で見ても理にかなっている。絶対に大丈夫だ 」と断言した。ところが地元紙の記者が「そう言われるがハッピーバレーもシャーティンも、競馬場はみな右回りではないか」と指摘。するとこれを聞いた陳氏がいきなり席を立ち上がって拳を振り上げながら「あれは馬だ。 騎手がいても実際に走っているのは、馬、馬」と気色ばんだ顔で切り返すというひと幕があった。

観光資源としての効果に期待

ここ最近、癒やしを前面に押し出した台湾や、韓流ブームの後押しのある韓国、大規模再開発により変貌を遂げたマカオなど、周辺国・地域の観光人気が上昇した。これにより香港の観光地としての相対的な地位は「地盤沈下」が続いていた。この状況を憂慮して、かつての啓徳空港の香港カーブを「隠れた観光資源」と捉えていた香港政府観光局が、その地盤沈下を阻止するべく、啓徳空港復活を以前から強く航空署に希望していた。これもKIA開港計画の背景のひとつにあるとみられる。

すでに昨年から同観光局が希望的観測も含めてKIA開港計画を非公式に各国の航空会社に伝えていたことから、数少ない便の獲得をめぐって早くも水面下で日本をはじめアジア、欧米各国の航空会社が同空港就航に向けた申請を検討する動きが出ているという。

KIAの計画発表を受けて香港政府観光局の司徒連達氏は、「かつて我々はトラム(路面電車)の運行廃止が決定される寸前に阻止した実績がある。歴史のあった啓徳空港は閉港となってしまったが、KIAにより事実上復活の運びとなったことは大変喜ばしい」と、KIA開港に歓迎の意を示した。また同氏は「KIAの 『香港カーブ』 は、一部の航空マニアにのみ支持されたかつてのような『隠れた観光資源』にはしない。 『新・香港カーブ』と名称をはっきり明示して海外に強くアピールし、新たな観光資源としていきたい」 と方策を述べた。さらに「着陸する航空機の乗客に、新・香港カーブの最中に機体が傾いて窓の真下に見える街の景色をより一層楽しんでもらえるよう、九龍城地区の数百のビルの屋上に100万を超える電飾を施し、上空を飛ぶ航空機めがけて一斉に強力なレーザービームを撃つ 『新・シンフォニー・オブ・ライツ(※)』 なども考えている」と具体的な構想の一部を明かした。

※「シンフォニー・オブ・ライツ」=ビクトリア湾をはさんで対面する香港島と九龍の44棟の主要ビルが参加する電飾によるショー。毎夜8時に行われる。「世界最大の継続する光と音のショー」としてギネスブックにも認定された。

「2047年」を見据えた周到な計画

実は新空港の計画は香港だけではない。中機委の関係者によると、中国では小型機の国内便ネットワークを張り巡らす目的で、現在、本土でも2025年から30年の開港をめどに231カ所で国内空港の建設計画が進んでいるという。

中国とイギリスによる1984年の「中英共同声明」により、香港は高度な自治が認められた特別行政区として1997年にイギリスから中国に返還された。しかしこの「特別行政区」という位置づけは、いわば50年間という「緩衝時間」を与えての時限措置だ。声明どおり返還から50年後の2047年、香港は特別行政区の座から降ろされ、政治的にも経済的にも完全に中国の一都市として組み込まれる。中機委の陳氏は否定しているが、空港としての規模を考えれば、KIAに2047年以降の「国内空港」の役割を見込んでいるのは、ほぼ間違いないだろう。

だが、そのような思惑と、KIA開港予定地周辺に暮らす人々の思いは別だ。九龍城地区で父の代からクリーニング店を営むロン・ワイケイさん(52)は「世界中から いろんな航空会社のマークの付いた飛行機がまたやってくる。九龍城地区にまたあの爆音が戻ってくる。やっぱりこの街にはあの爆音がお似合いだ」 と KIA開港に期待を寄せる。

ロンさんは語る。
「私が物心ついたときから、頭の上をキーンという大きな金属音をともなったジェット機の爆音が数分おきに通過するのが、ここ九龍城地区の日常だった。家にいても学校にいても道ばたで遊んでいても、いたずらをして親にしかられているときだって、頭の上の爆音は暮らしの中の当たり前の音だった。空港があっち (ランタオ島) に行ってからこのかた、たしかに私たちは静かな生活を得た。でも、慣れ親しんだ爆音のない生活は寂しくもあった。けれどもあの爆音が帰ってくる。 しかしひとつ心配なことがある。2019年からKIA開港までの3年間、私たちの頭の上でパイロットの急旋回訓練があると聞いた。本当に市街地の上空で訓練をやるのか。本当に私たちの頭上でやるのか。ちょっと恐い感じもする」 。

ランタオ島にある現在の香港国際空港は、今後もおそらく国際空港としての位置づけは変わらず、その一方で「第2国際空港」のKIAは最終的には「国内空港」になると思われる。空港ビルなど周辺諸施設の用地買収のめどが立たないまま、なぜ滑走路だけを先行して建設し、本土の国内空港に先んじて開港を急ぐのか。それは空港周辺の建造物の高さ規制についてさまざまな利権が絡み先行きが極めて不透明なため、今のうちに着陸のための飛行ルートを確保しておきたい考えだと推測される。計画書では 「当面は『国内便』はない」 とあえて明記しているが、その真意は不明だ。だが、KIAの開港は、香港が2047年に名実ともに中国の一員となった時点での国内空港確保をにらんでいるというのが、関係筋のほぼ一致した見方だ。

【2012年4月1日 香港・事時 宇宗田是和】

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追記:この記事は「4月1日」にアップしたものです。(→こちらを