返還の数日前に香港に乗り込んでいた私。

返還の瞬間をどこで迎えようか迷いました。
ハッピーバレーで行われるテレビ局主催のイベントと、
政府関係の主催(?)による、ジャッキー・チェンらも参加するもっともオフィシャルなイベント
(もちろん返還式典そのものではありません)の
2つのイベントのチケットをダブルで入手していて、
どっちに行こうか当日までずっと迷っていたのですが、
悩みに悩んだ末、私と妻(当時はまだ結婚前)は、
6月30日当日の夕方近くになって
「お仕着せのイベントに行くのはやめよう」
ということを決断。
普通に街なかで返還の瞬間を迎えることにしました。

街なかならどこがいいか。

毎年の正月のカウントダウンで有名な蘭桂坊にしようかとも思ったが、
ここは西洋人のパワーというか色が強いのでパス。
次に尖沙咀のハーバーのプロムナードも考えたが
結局そこもパスして、銅鑼湾のタイムズスクエア前広場で
返還の瞬間を迎えることに決定。

広場に行くと、俳優の小林薫氏を見かけました。
プライベートで来ていたのか?
なぜか小林薫氏の頭は金髪でした。

人々でごったがえし、テレビカメラがあちこちでライトを照らす中、
カウントダウン直前に地元の香港の人々のグループと意気投合して
いっしょにカウントダウン。
1997年7月1日 午前0時00分、
ついに香港がイギリスから中国に返還されました。
って、人々が騒ぐ以外にはなんの変化もそこでは起きなかったんですが、
それは当然のことでした。

その我々の姿が返還直後のNHK総合のニュース番組に(けっこう大きめに)写っていたのを
予約録画しておいたビデオを帰国後に見て驚きました。
同じく銅鑼湾に来ていたNHK BSの返還直後のナマ中継では
野次馬のひとりとしてカメラに自ら収まりにいきましたので、
こっちは写っていることは事前に確信していたのですが。

街なかで香港の人々と普通に
返還を迎えたことは正解だったと思いました。

でも、少し惜しかったのが、その後の人民解放軍の入境を見なかったことです。
返還直後の深夜、中国本土から人民解放軍が入境してくるのを
たくさんの人々が新界まで行き見物したというのを
次の日のテレビで知りました。

正直なところ、
「イギリス植民地のままの香港でいてほしかった」
というのが、きわめて勝手な旅行者としての私の想いでしたが、
どうせ返還されてしまうなら、盛り上がろう
と思ったのでした。

返還のときは、大騒ぎに巻き込まれた感じで感動とか感傷はなかったです。
それよりも、返還のその数時間前、
中環のハーバーでヴィクトリア湾の花火大会を見ていたときに
花火が上がるたびに小さな声で口々に「ワー!」と歓声を上げている香港の人々の姿を見て
なぜか涙が出そうになったのでした。