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香港ファンから見た台北
第1日目(2015年8月9日) その1

この記事のつづき。

<台北松山空港について>

この台北旅行の日程は2015年8月9日~14日の5泊6日。

(「2015年」と書いていますが、間違いではありません。この記事は、去年の台北旅行の、訳あってちょうど1年遅れのリポートであります)

私とカミさん、それと中学生の息子の3人旅行。

旅行前の準備をけっこう綿密にやる私は、旅行用ノートに、行くべきスポットや食べるもの、地元スーパーマーケットや夜市の候補などをリストアップし、準備万端。

ところが……旅行の1週間ほど前に大型の「台風13号」が発生。

予報では、よりによって出発の日あたりに台湾を直撃するという。

それからは毎日、気象庁のホームページを見る日々。台風の進路が示してあって、毎回ページにアクセスするたびにちょっとずつ台風の白い影が台湾に近づいているので本当にヤキモキした。

結局、台風は旅行前日の8日に台湾に上陸し、台北発着の飛行機はぜんぶ欠航。明日はどうなる?

私は、「きょう8日の台北からの飛行機が欠航で向こうで足止めくらってこっちに来ないなら、日本から飛ばす機材がなくなって明日9日も飛ばないんじゃないか」などと思ったのだが、こういうときのために予備の機材があるとかで、なんとか9日は飛んでくれた。

この写真はまだ日本上空。真ん中に見えるのは富士山。

fujisan

使った飛行機は、羽田―台北(松山空港着)のチャイナエアの一番早い朝7時発の便。

台風の影響で離陸が遅れたが、台北の松山空港には午前11時20分頃に着陸。着いてみたら台北は台風一過で晴れていた。

songshan

入国後、空港ロビーで無料WiFiのパスワード取得手続きなどをしたりしてモタモタしたため余計な時間をくってしまった。けれども、松山空港は台北の中心地まですごく近いので、台北駅前のホテルには13時頃に到着。空港から地下鉄のMRT(「MTR」じゃない)に乗ってホテル最寄り駅までわずか15分ほど。

ちなみに
香港のMTRは 「Mass Transit Railway」だが、
台湾のMRTは 「Mass Rapid Transit」だそうだ。

初日に泊まった宿はコスモスホテルというスタンダードクラスのホテル。これについては次回。

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前置きが長くなったが、今回の記事のメインは、

「香港ファンから見た台北」という視点での、台北の松山空港について。

東京(羽田)から台北に行く場合、台湾には2つの空港がある。

ひとつは、台北郊外の桃園市にある台湾桃園国際空港(臺灣桃園國際機場/Taiwan Taoyuan International Airport)。

もうひとつは、台北市内にある台北松山空港(臺北松山機場/Taipei Songshan Airport)。

飛行機はこのどちらかに着陸する便となる(成田からの便はすべて桃園行きになると思う)。

20年ほど前に初めての台北で私が降りたのは桃園空港(当時の名前は中正空港)だった。今回私たちが選んだのは松山空港だ。

台湾の国内線が主体の、羽田空港のようなポジションの松山空港。その松山空港から国際線を分離移転させたかたちの、成田空港の生い立ちに似ている桃園空港。

桃園空港の位置はこちら(Googleマップ
松山空港の位置はこちら(Googleマップ

今回、初めて松山空港に降りてみての第一印象は、「古くて小さい」

規模が大きく近代的な桃園空港に比べて、小さな松山空港はかなりローカルな雰囲気で設備も古い。海外からの玄関口としてポピュラーなのは、華やかな桃園国際空港だと思う。

しかし私は今回使った松山空港の方がいいと思った。

その理由は、一般的には松山空港の方が台北市の中心地に非常に近くて便利なことが挙げられるが、それよりも、香港ファンの視点で、私にはもっと大きなおすすめの理由がある。

それは、松山空港への着陸の時に窓から見える景色が、香港にかつてあった、あの伝説の啓徳空港着陸のときのそれを、ちょっとだけ彷彿とさせる、と私には思えたこと。

着陸前に急旋回する「香港カーブ」はさすがにないが、けれども、市街地に降りて行くあの感覚が、香港の啓徳空港に似ている。と、私は感じた。

私は着陸の風景は撮影しなかったが、私が見たのと同じものが、YouTubeにアップされている。

<台北松山空港への着陸 機窓からの風景>

かつての香港啓徳空港への着陸もYoutubeにアップされている。この動画は以前に当ブログでも紹介した。再度お借りして松山空港と見比べてみる。

<香港啓徳空港への着陸 機窓からの風景>

こうして見ると、さすがに香港カーブの啓徳空港着陸は迫力があった。でも、松山空港着陸にも「キター!」感がある。

特に、滑走路進入直前に、車がたくさん走っている道路を横切る風景を間近に見られるところなんて、この2つの空港はソックリではないか。

「たくさんの車が道路を走る風景」に「活動真っ最中の街の息吹き」を感じる。

ちなみにこちらが桃園空港への着陸。

<桃園国際空港への着陸 機窓からの風景>

「台北にキター!」感は、桃園空港よりも松山空港の方が台北市内にある分やはり強いと思う。

こちらには、松山空港着陸の風景の、翼ナシでより鮮明な動画がある。
https://www.youtube.com/watch?v=eVMVuxZckFk

ところで、窓の景色を見てこの「キター!」を味わうには、当然、窓側の座席を確保する必要がある。

今回の便の機材(A300-300)は、センターに4席、両サイドに2席ずつ並ぶレイアウトだ。
A300-300座席配置図

サイドは2席ずつなので、家族3人だと1+2の配置。

まず前列の窓側にカミさん、次の列の窓側に息子、私は息子の隣の通路側を確保した。

全体の中での席の位置は、窓から外を見て翼が視界の邪魔にならないか、また左右どちらの席にするかなども考えた。私の場合、翼がいい具合に若干視界にある方がいい。つまり後ろの方の席だ(このページの上から2枚目の写真参照)。

私は通路側だが、十分に景色を見ることができた。当日は台北101ビルや、自分たちが泊まるホテル(2泊目以降のシーザーパークホテル)も機内の窓から見ることができた。機体が地上付近まで降りているので、見下ろすのではなく、ほぼ水平方向に近い形で見ることができた。

とにかく私は、海外旅行では着陸のときに可能な限りその都市・街への「キター!」感を味わいたい。

松山空港着陸は「台北にキター!」が味わえると思った。

さて、無事松山空港に着き、ロビーから外に出ると、目の前にはMRTの駅(松山機場站)へ降りていく階段の入り口があるので、降りて行ってMRTにさっと乗ると、そこには、いきなり日常の生活でMRTを使っている地元の生活者の乗客が普通に乗っている。

なんで日常の普通の乗客がいるかというと、松山空港のMRTの駅は「始発駅・終着駅」ではなく普通の地下鉄路線の「途中駅」だから。

だからMRTを日々、日常使用する乗客がフツーに乗っている。

その上、松山空港からMRTに乗ると、ほどなくして窓には市街地のビルの風景が広がる。ビルの谷間をMRTが走るのだ。

このように、いきなり旅人が街なかの日常の風景に放り込まれるという寸法。これも啓徳空港に似ている(啓徳空港からはバスやタクシーだったが、空港の周りはボロボロの雑居ビルだらけだった)。

Youtubeにアップされた下の動画は、松山空港へ向かうMRTからの景色。空港へ向かう便の動画なので進行方向が逆だが、空港付近を走るMRTの窓から見える景色がどのようなものかは分かる。

ということで、松山空港に降りる便を選択すれば、飛行機が着陸するときに窓から台北の街並みを堪能でき、そして空港を出てMRTに乗ればフツーの生活者の人々の間に紛れ込むことができて、さらにすぐに車窓の市街地の風景を楽しめる。

つまり、台北へのアプローチにおいて、自分の周りがだんだんと台北色に染まっていく……というようなグラデーションはかからず、自分の身体がいきなりストンと台北の街に放り込まれるという仕掛け。これがすごく面白かった。

この展開に、いたって冷静な息子を前にして誰より私が一番興奮してしまった。おそらく妻も心の中で感激してたはず。

前回、私が20年くらい前に台北に行ったときは、松山空港着の便はなく、羽田発のチャイナエアも、台北郊外の桃園空港に着陸していた。桃園空港に着陸するときに窓から見えたのは、郊外の風景だったと記憶している。

(ちなみにチャイナエアは、当時は一般に中華航空と呼んでいたと思う。また前述のとおり桃園空港も当時は中正空港という名前だった)

前回私が経験したのは郊外の中正空港(現桃園空港)だったから、それに比べて今回の台北市街地に突っ込む松山空港への初めての着陸は、旅の興奮のプロローグとなった。

というわけで、台北に行くときに松山空港着の便を選ぶと、まぼろしの啓徳空港を彷彿とさせる醍醐味を堪能できる。と、私は思った。

 

以下補足。

桃園空港も台北までのMRTが開通するそうだ。ただ、延期に延期を重ねているらしい。私が去年台北に行くときに読んだガイドブックには、「今年(2015年)の10月開通予定」と書いてあったが、その後、いろいろあったらしく、今年2016年の年内に開通されるかどうかといった感じのようだ。

以下蛇足。

海外旅行において、飛行機がいよいよ目的地に着陸するというときに窓から見える景色は、私は、映画の冒頭のオープニングみたいなものだと思う。

例えば映画「スター・ウォーズ」でいうと、本編の始まる前のオープニングの20世紀FOXのファンファーレみたいなものだ。

(ついでに言うと、ディズニー配給となった「スター・ウォーズ エピソード7 フォースの覚醒」は映画自体は面白いのに冒頭で20世紀FOXが出てこないから残念だった。<ディズニー配給で通常なら出てくるはずのディズニーの「お城」のオープニングが出てこなかったのでホッとしたが、これはディズニーによるスター・ウォーズのファンへの配慮だったそうだ>)

私にとって啓徳空港への着陸とは、香港旅行の始まりを告げる20世紀FOXのファンファーレだった。香港でそういう仕掛けはもう望めない。けれども、台北の松山空港には、ファンファーレがまだある。