2006年10月アーカイブ

 ※この記事は香港映画『I'll Call You』(中文原題 『得閒飲茶』)のお笑いのシーンのネタバレを含んでいます。この映画は日本でもDVDでリリースされるかもしれません。まだご覧になっていない方で、素の状態でこの映画をご覧になりたい方は、この記事を読むのを控えたほうがいいかもしれません。

 10月26日の記事 「映画祭 『I'll Call You』 ティーチ・インでラム・ジーチョン監督に直撃質問をしました!!」 の 「続報」 です。

 26日の記事の最後で書いたように、10月24日に行われた第19回東京国際映画祭出品作品 『I'll Call You』 の第1回目のティーチ・インで、監督のラム・ジーチョンが質問に答える形でこう語りました。
  「この映画で流れる演歌は、歌手がうたっているのはなくて、実は私の友人の、映画製作配給会社ギャガコミュニケーションズの社員の方がうたいました」。
 半年前の3月に、学芸員Kは香港に行ってこの映画をすでに観ていました。その際、現地の新聞に載った同映画の広告から、その人の名前を把握していました。その方の名は、「阪井洋一」さんです。この人が歌手ではなくて、ギャガの社員だということを、今回のティーチ・インでのラム監督の言葉で学芸員Kは初めて知りました。

 この「阪井洋一」さんの名は、映画のエンドロールでもしっかりクレジットされています。今回の映画祭でも見ました。しかし今それは確認しようがありません。そこで、手元にとってある新聞、「蘋果日報 」 3月17日付の 『I'll Call You』(『得閒飲茶』)の一面広告を再び見てみると―――

IllCallYou-ad.jpg

 青い矢印のところにキャスト、スタッフがクレジットされています。アップして見てみると―――

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 いちばん右、「主唱:阪井洋一」となっています。で、今回もう一度よく見たら、作詞にもこの「阪井洋一」氏が名を連ねているではありませんか。この映画のために作詞された曲なのか? 曲のタイトルは 『死狗』 。「死の犬」って、すごい題名(笑)。負け犬ってこと? それとよく見たら、この曲、挿入曲じゃなくて「主題曲」ってクレジットされています!

 作曲/編曲は「黄英華」となっています。なんとなくペンネームっぽい名前ですが、この人が日本人ではなく、香港人、あるいは中国人など日本人以外であるならば、つまりこの曲 『死狗』 は 「異国人のイメージにより作曲された日本演歌」 ということになります。

 そういえばラム監督が、24日の第1回目のティーチ・インで、「ギャガのサカイさんに電話して、歌ってくださいとお願いしたら二つ返事で 『いいよ』 と言ってくれました」 と語った際、たしか 「この映画のためにこの曲を作りました」 とも言ってました。だからこの演歌 『死狗』 は、『I'll Call You』 のためのオリジナル曲なのでしょう。

 さて、阪井洋一さんのことが知りたくなり、試しに「ギャガ 阪井洋一」で検索してみました。すると出てきました。ところが、たどっていくと、「阪井洋一」さんではなくすべて「坂井洋一」さんとなっています。

 坂井洋一さんは、ギャガコミュニケーションズで映画 『平成刺客伝 鉄』の製作や、映画『 19 (ナインティーン)』の企画、映画『DRUG GARDEN』の音楽プロデューサーをしたりしている方です。

 検索してわかったのは、「阪井洋一」さんは、実際は「坂井洋一」さんという お名前の方ではないかということです。学芸員Kの勝手な推測ですが、おそらく、検索で出たギャガの「坂井洋一」さんと、『I'll Call You』でクレジットされラム監督が語るギャガの「阪井洋一」さんは、同一人物ではないかと思われます(もし別人物だったらこのブログ記事は意味がなくなり撃沈します(笑) )。

 では、どうして 『I'll Call You』 の新聞広告では「坂井」でなくて「阪井」になっているのか?  「阪井」が今回限りの芸名や雅号みたいなもなのとも考えられますが、あるいは、ひょっとしたら単純に香港のスタッフが字を間違えたのかもしれません。香港映画のスタッフロールでのそういう表記ミスは、過去に見たことがあります。または、当然ですが、広告だけにこの誤字があったのかもしれません。映画本編でのエンドロールが「阪井」さんだったのか「坂井」さんかだったのかは、今、確認できません。(ここでは、以下とりあえず「阪井洋一」さんでいくことにします)

 ギャガは以前より香港映画とは関係が深く、最近では 『頭文字D』 なども配給/提供しています。そして、ズバリ、あの 『少林サッカー』 はギャガの配給です。この映画に出演したラム・ジーチョンとギャガの阪井洋一さんは、『少林サッカー』 の仕事を通じて出会ったのだと思われます。

 で、ここからは、学芸員Kの完全なる妄想。

 2002年、『少林サッカー』の日本での劇場公開の仕事で、出演のラム・ジーチョンさんと配給会社ギャガの阪井洋一さんが、出会った。

 2002年春、東京。 『少林サッカー』の日本でのプロモーション活動が成功のもと無事終了したある日。ギャガ側から 「じゃあ、今夜は食事でもどうですか。用意させていただきました。ドカンと打ち上げといきましょう」 とごく当然のお誘いがあった。そしてチャウ・シンチーら香港側メンバーと阪井さんほかギャガのスタッフが集まってみんなで繰り出し、楽しい食事でおおいに盛り上がり、そして場所を移して3軒目くらいでカラオケボックスかクラブ(平坦に発音するいまどきのクラブではなくて従来のクラブ)へ。いずれにしてもカラオケのできるお店。

 なぜか最初のお店から波長が合って意気投合したラム・ジーチョンさんと阪井さん、並んで席に着く。盛り上がる香港と日本のスタッフ、キャストの会話が飛び交うなか―――

阪井さん 「ラムさん、なにか歌われますか?」
ラムさん 「いやあ、ここは日本ですから、まずはサカイさんの方からどうぞどうぞ!」
阪井さん 「じゃあ、歓迎の気持ちを込めて。お先にいきます! サザンの『TSUNAMI 』から
      いこうかな」
ラムさん 「どうぞ!」

 阪井さん、マイク持ち熱唱。うまい。
 続いてラムさん、香港か日本の歌を気持ちよくうたう。うまいかどうかはわからない。

ラムさん 「次、サカイさん」
阪井さん 「じゃあ、こんどはひとつ日本の心、演歌うたってみようなかな」
ラムさん 「どうぞ! 私、香港でも昔から紅白歌合戦で演歌は聴いてきました!」
阪井さん 「ホント? そうなんですか! じゃあ山本譲二の 『みちのくひとり旅』 、いいですか?」

 と、阪井さん、みちのくひとり旅、大熱唱。メチャクチャうまい。
 ラムさんが演歌では森進一のファンだと言うと、阪井さんは続けて 「冬のリビエラ」 も熱唱。ラムさんも途中からいっしょに歌う。

ラムさん 「サカイさん、あなたすごい!うまい!」

 このカラオケで日港双方の人々は大いに盛り上がり、ラム・ジーチョンさんはここでギャガの阪井さんの歌のうまさを知るところとなる。

 時は流れ2005年の秋――。ラム・ジーチョンさんは初めての監督作として映画 『I'll Call You』 の企画を進めている。ある日、ふと、「このシーンでなにかパンチがほしいな。そうだ、主人公の心象をあらわすのに演歌を流したら面白いかも。……あ、思い出した、歌はギャガの阪井さんに頼めないかな。あの人メチャクチャうまかったし。引き受けてくれるだろうか」 と思い立つ。そして、デスクの受話器を取り、東京の阪井さんに国際電話。

ラムさん 「……もしもし、ラム・ジーチョンです。ご無沙汰しています!」
阪井さん 「………あぁ! ラムさん! お久しぶりです! 香港から?」
ラムさん 「そうです! 『少林サッカー』では本当にお世話になりました。ありがとうございました。
      あの映画がきっかけで、いろんなチャンスがめぐってきた感じなんです。
      あの、実は僕、監督やることになったんです」
阪井さん 「やりましたね、そりゃ本当におめでとう!」
ラムさん 「どうもどうも! で、今、初めて監督する 『I'll Call You』 という映画の企画を進めて
      るんですけど、ストーリーは(中略)…、で、女の子にフラれた主人公がトボトボ街を
      歩くシーンがあるんですけど、そこで演歌を流したいんですよ、――― そうです、
      日本語です。それで、お願いなんですが、その演歌、もしできたらサカイさんに
      ぜひとも歌ってもらえないかなと思って……」
阪井さん 「は? 私? 私でいいんですか? やらせてください!」

 と、ティーチ・インでラム監督が語っていたように、二つ返事で阪井さんはOK。

ラムさん 「え! ありがとうございます!」
阪井さん 「曲はなんですか? なんなら私が作詞もしてみましょうか?」
ラムさん 「は? ええ、では是非! いやあ、ありがとうございます!」

 そしてのちに 『I'll Call You』 』(中文原題 『得閒飲茶』)主題曲 オリジナル演歌 『死狗』
(作曲/編曲:黄英華、作詞:謝杰 阪井洋一、主唱:阪井洋一)が誕生する。

 学芸員Kの妄想終わり。

 以上、あくまで妄想ですよ、妄想。でも、こんなエピソードに近い感じのものがあったのではないか。あるいは、もしかしたら、まず阪井さんの歌のウマさがはじめにありきで、あの演歌のシーンが発想されたのかもしれません。

 オリジナル曲でしかも「主題曲」とクレジットされるくらいだから、もし 『I'll Call You』 のサウンドトラックCDが出ていたら、メイン曲としてこの 『死狗』 が入っていたことでしょう。香港映画はサントラ盤があまり出ないですけど。

 作詞に関しては、クレジットで連名で出ている香港側の謝杰さんという人がまず映画の内容に合わせて中文で作詞してみて、それを阪井さんが日本語の演歌調にうまく翻訳、アレンジしたということなのかもしれません。

 香港映画に「日本」が出てくると、日本人の学芸員Kはすごく楽しい気分になります。香港映画に「日本」が出てくるとき、それは旧日本軍とその蛮行の場合もあり、そんなときは気分が重くなりますが、しかし、日本の文化やグルメなどが出てくるとその作品にやっぱりグッと親しみを覚えます。

 ネットで検索してみると、坂井洋一さんはなかなか活躍されている方のようで、雑誌などにも露出されています。学芸員Kは存じませんでしたが、けっこう有名な方なのかもしれません。

 なお、最後に付け加えておきますと、阪井洋一さんは、この映画では演歌の歌声だけでの出演です。画面に現れて派手なアクションで熱唱した人は、香港人と思われる別の人で、阪井洋一さんの歌声に合わせて口パクをやっています。

 きのう、六本木TOHOシネマズで行われた第19回東京国際映画祭「アジアの風」出品作品
『I'll Call You』(中文原題 『得閒飲茶』)上映に再び行き、映画終了後のティーチ・インで学芸員Kはラム・ジーチョン(林子聰)監督に質問をぶつけてみました。

 ※ここに書いてあること(<★★★>から下の文)は、映画 『I'll Call You』 の直接のストーリーのネタバレにはなっていませんが、笑いのシーンのネタバレになっていますので、この映画を素の状態でご覧になりたい人は読むのを控えたほうがいいかもしれません。

 ※ご参考に「香港なんでもケンショウ堂」の「机上のクーロン」の「アレックス・フォンという人、知ってます?」をご覧ください。(ただし上と同じ笑いのシーンのネタバレがあります)

 ※大変文が長くなり、またこの映画を観ていない方にはほとんど意味を持たない記事ですが、自分のための記録の意味もあって書きましたのでご了承ください。

IllCallYou-poster.jpg
     【上映映画館入り口にあった英文ポスター】
     「アレックス・フォンという人、知ってます?」にこのポスターと
     同じ写真を使った中文版の新聞広告を載せています。
     (このポスターの写真、一見すると何か神経質そうな内向的な
     雰囲気の映画に思えてしまう。ちょっと損をしているのでは?
     学芸員Kは香港の地下鉄駅でこのポスターを見たとき、
     少なくともまさかこれが喜劇とは思いませんでした)


 25日午後8時すぎ――。『I'll Call You』 の上映が終わりました。学芸員Kが座った席は、前から7列目のど真ん中で、フロアの傾斜から考えて映画を観るにはベストとも言える席でした。スクリーンの前では、監督のラム・ジーチョンを迎えてのティーチ・インのセッティングが行われています。

 学芸員Kはすでにきのうの24日、『I'll Call You』 を観てますので(香港で観た2回も含めるとこれで4回め)、きょうの目的はただひとつ、香港でこの映画を観たときから不思議に思っていたことを、このティーチ・インでラム監督に質問して、その疑問を解くことです。質問できなければきょう来た意味がなくなります。質問の要点を書いたメモもポケットに準備してきました(笑)。

 きのうのティーチ・インの時間の様子からみて、質問できる人は数名だとわかりました。また、もし近くの席に座っている人が先に当たったら、そのあとで学芸員Kが手を挙げても当たることはもうないとも思いました。司会者は会場をまんべんなく当てるものです。だから質問するなら最初に当ててもらわないとチャンスが激減するな、と考えました。また、内容はまったく違っているが微妙に似ている質問だったり、あるいは内容は違っても同じキーワードを含む質問が先に出たら、もうそのあとにはマナー上から似た質問はできないな、とも考えました。というようなわけで、とにもかくにも勝負となるのは一番最初です(必死)。――こんなことを映画館に向かう地下鉄の中であれこれ考え巡らせていました。

 きのうのティーチ・インでは、質問の手を挙げる人がやや少なめだったと思いましたが、映画館に入って場内を見回すと、きょうは映画館も大きめで、また、今回は気分が高揚する夜の時間帯でもあり(ホントか?)、多くの人が手を挙げそうな予感がしました。ティーチ・インはわずか30分間です。「質問するなら、やっぱり、しょっぱなから手を挙げて、なんとか最初に当ててもらうしかない」 と思いました。

 しかし、学芸員Kの質問の内容が、映画の根本的なテーマについてではなく、ちいさ~なことなので、最初の質問には向かないかもしれない……と、ひるむ気持ちもありました。

 さて、前置きが長くなりました。

 <★★★>以下、ネタバレに入ります。
 この映画 『I'll Call You』 には、主人公が女の子にフラれて夜の街をトボトボ肩を落として歩くシーンがあります。このシーンでいきなり日本語の演歌が流れ、その歌の進行に合わせて文字の色が変わる日本語のカラオケ字幕が画面に出てきます。さらにその演歌を歌う歌手が登場して主人公の後ろを付いていきます。この演歌は、映画のエンドロールにも流れます。

 質問の要点はこうです。
・香港の映画館では地元の香港映画にも中国語と英語の字幕が必ず付くが、この作品では
 日本の演歌のシーンだけ、他のシーンとは違って字幕が付かなかった。それはなぜ?
・字幕が付かないのに香港の映画館ではこの演歌のシーンに観客が大ウケしてみんな笑って
 いた。それはなぜ?

 こんな感じの、映画のストーリーやテーマには直接関係ない質問なので、最初の質問としてはキビシイかなと思ったのです。

 ところが司会者の女性が現れて開口一番、ニコニコしながら 「みなさん、いかがでしたか? 映画が終わっても、まだ皆さんの頭の中にはあの演歌が流れているのではないでしょうか(笑)?」 と言い、これに対して会場がウケたので、学芸員Kは 「しめた!司会者が前フリをしてくれた。ここはもういくしかない」 と、腹を決めました(笑)。先手必勝です。

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 ラム・ジーチョン監督が拍手で迎えられ、ティーチ・インの始まりです。広東語の通訳の方、英語の通訳の方、司会の女性が着席しました。そして上に書いた司会者の前フリがあって―――

 以下、記憶をたどって再現。

 司会者 「――― それでは皆さん、いろいろ監督にお聞きしたいことがあると思いますが、
      お聞きになりたい方、どうぞ手を挙げて……」

 司会者が言い終わらないうち、ここで、きのうよりも多い数の挙手をする人に混じって、学芸員Kは席から腰を浮かせ気味にして高く高く高く手を挙げました。もう挙手の勢いで目立つしかありません。

 司会者 「わあ、そちらの真ん中の席の方、ものすごく手が高く挙がってますね(笑)。それでは
      真ん中の男性の方」

 学芸員K 「(え、オレ? ほんと? やった!)」

 席が司会者からほどよく離れた位置だったので当てやすかったのかもしれません。しょっぱなに当たるなんて、学芸員Kが地下鉄の中で描いていたシナリオどおりになってしまったのが逆に意外でした。係の人から、マイクを受け取りました。マイクを持って席から立ちました。

 学芸員K 「ちょっと質問のメモもってきました。大変面白い作品で楽しかったです。
       あの、私、日本人なんで、やっぱりあの演歌のシーンについて聞きたいんですが、
       私、実は3月に香港でこの映画を観たんですが―――」

 ここで、隣に座る広東語の通訳の方に耳を寄せて聞いていたラム・ジーチョン監督が、急に目を丸くして驚いた表情でこちらを見て、いきなり立ち上がり、ニコニコしながらドーモドーモと学芸員Kに向かって何度もお辞儀! そんなリアクションはまったくの想定外だったので学芸員Kは正直、嬉しかった。会場もこのラム監督のコミカルな動作に大ウケでした。

 学芸員K 「で、香港の映画館では、地元の広東語の香港映画にも中国語と英語の字幕が必ず
       付きますよね。ところがこの映画では、他のシーンは中国語と英語の字幕が付いて
       いるのに、あの演歌のシーンだけ、日本語のカラオケ用字幕が出てくるのに中国語
       と英語の字幕が付いてませんでした。それはなぜですか?」

 ここで、英語の通訳の方が会場に向けてこの質問を英語で通訳し始めたので、思わず学芸員Kは 「あ、あ、もうひとつ質問です!」 と、それを制止してしまいました。通訳の方、どうもすみませんでした。

 学芸員K 「もうひとつの質問は、その演歌のシーンに字幕が付いてないのに、香港の映画館で
       私のまわりに座っていた香港人の観客が大笑いしていたのですが、日本の演歌って
       なにか面白いとか、こっけいだとかそんなことがあるんですか?」

 メモを用意しましたが、結局、ほとんど見ないまま、だいたい上のようなことを話しました。広東語の通訳を聞いて、これに対してラム監督が次のように答えてくました。

lam2.jpg
 ラム監督 「私は子どものころからテレビで(NHKの)紅白歌合戦を観てきました。森進一などを
       聴いてきました。日本の演歌はすごく余韻があって、独特の雰囲気があります。
       今回は雰囲気を重視して字幕を付けませんでした。また、もうひとつの理由は、
       紅白歌合戦で森進一が出てきて、彼だけが歌い、ほかの歌手はズラッと後ろに
       並んでいるだけというシーンを見たことがあるのですが、本人以外はいっさい歌え
       ない雰囲気というか、そんな厳粛な雰囲気がそのときの演歌にはあって、そんな
       雰囲気も、字幕を付けないあのシーンで出したかったのです。
       また、もうひとつの質問の、なぜ香港の観客がこのシーンで笑ったかというと、あの
       シーンは最初は歌だけが流れて、途中から歌手が出てきますが、香港人が笑った
       のは、それは演歌がおかしいから笑ったのではなくて、あの演歌に合わせて、
       演歌歌手が歌いながら主人公にくっついて歩いたのがウケたのだと思います」

 と、おおよそ、ラム監督は以上のようなことを回答してくれました。ただし正直に言うと、学芸員Kは質問したあと、気持ちが高揚していて、回答の内容について記憶がちょっと曖昧になってしまいました。(なにい!?) だから肝心なところがスッポ抜けてるかもしれません。ご了承のほど。

 たしかに、ひらがなの多い日本語のカラオケ字幕は、香港の観客にとってはまったく意味不明なもの。日本人が漢字の中国語字幕を見て何となく推測できるのとは訳が違います。最近、香港の方のブログ上で、コメントのやりとりをしたのですが、そのとき、香港人の方が、「日本人は漢字をふだん使っているのだから中国語の文は意味がわかるはず」 と言うので、学芸員Kは 「知らない漢字が多いから私は全体の60%から80%しかわからない」 と答えたら (いや、今考えたら実際は50%以下だな)、彼は 「60%から80%ならいい。私は日本語の文を見ても5%以下しか読めない」 と言ってました。たしかにそのとおりなのだと思います。
 あのシーンで香港人には意味不明な日本語カラオケ字幕を出して、本来ならそれに添える中国語や英語の字幕を付けなかったのは、付けなかったからこそ、香港人にとっては歌声の音声と独特の音楽、その余韻だけが伝わり、面白いものになったのでしょう。一方、日本人がこの映画を観れば、このシーンでストレートに演歌の歌詞の内容が耳と目から伝わってきて―――その歌詞の内容が映画の意図するところとはズレていたとしても―――主人公の心境を表すひとつの道具となります。
 この映画はもともと国際性の高い作品ではないでしょうし、日本人が観ることを特に前提としないで作られたと思いますが、いずれにせよ、あの演歌のシーンでは、香港人ほか日本人以外が観る場合と、日本人が観るのとでは、演歌の内容がわかるかどうかで明らかに受け取る情報量が違います。本来、映画というものは文化の違うそれぞれの国で、ギャップを生じつつ鑑賞されるものだと思います。そんなことをこの演歌のシーンで思い知りましたが、ただ、通常なら字幕などでそのギャップを埋めるのが普通なのに、この演歌のシーンは日本人とそれ以外の人が観た場合に得る情報量のギャップを意図的に広げてあるのでした。
 香港の映画館でこのシーンを観たとき、まわりの香港人観客といっしょに笑いながら、学芸員Kは 「この場内で今、歌の内容が耳に入ってくるのオレだけ? いやでも歌詞の内容がわかってしまうんだけど……。オレだけこのシーンを違う目で観てしまってるんだな」と思いました。だからこの映画、香港で香港人の友人なんかと観たら、鑑賞後に話がはずんでもっと面白かったかもしれません。贅沢を言えば、一度、香港人の眼でもこのシーンを観てみたいです。

 ところでもうひとつの質問への、ラム監督の 「日本の演歌に対してではなく、歌手が歌いながら主人公について歩いたから、香港の観客が笑った」 という回答。これは、もしかしたらラム監督が、学芸員Kを含め会場の人々に誤解を与えないように配慮した回答だったのかもしれません。というのは、たしかに歌手役の人が画面に登場したのは笑えましたが、やっぱり、あの演歌のシーンは、演歌自体の持つ雰囲気が、あの場面においては笑える、と思えるからです。それは異文化としての面白さ、語弊を恐れずに言えば、おかしさです。
 このティーチ・インは時間もそれほど長くなく、日本語と広東語の通訳、また一部の来場者のために英語の通訳を介して行われました。もし言葉を尽くせるだけの時間が十分あって、異なる言語という壁を解消できるなら、さらに、異国の人間同士の誤解がもし生じた場合にそれを解くだけの時間があったとしたなら、ラム監督の回答は違ったものになったかもしれません。これはあくまで学芸員Kの推測です。

 あと、印象に残ったのは、ラム監督の 「紅白歌合戦で森進一が出てきて、彼だけが歌い、ほかの歌手はズラッと後ろに並んでいるだけというシーンを見たことがあります。本人以外はいっさい歌えない雰囲気というか、そんな感じがそのときの演歌にはあって―――」という言葉です。
 学芸員Kは記憶が薄いのですが、香港の歌番組やチャリティ番組なんかだと、たとえば大物歌手のジャッキー・チュンなどが歌っているときでも、後ろのほかの歌手はいっしょに歌ったりするのが普通なのでしょうか。香港のテレビ番組でそんなようなシーンを観たような気もします。だとすれば、ラム監督の眼には紅白歌合戦のそのシーンが新鮮に映ったのでしょう。

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 ラム・ジーチョン監督は、学芸員Kの質問に本当に丁寧に答えてくれました。学芸員Kの質問とそれに対するラム監督の真摯な回答で10分くらいを使ってしまったので、ほかの質問者の方に対して少しばかり恐縮に思いました。

 半年前に香港でこの映画を観たときは、まさかあとになって日本で監督に作品のことを直接質問できるとは思ってもみませんでした。この映画 『I'll Call You』 は、香港で観た3日後に主人公のアレックス・フォンに香港の街なかで遭遇して話をしたり(記事はココ)、今回は監督に疑問点を直接質問できたりで、学芸員Kにとっては特別な1本となりました。

 あと、この演歌について、24日の第1回目のティーチ・インでは監督の口から出て、翌日25日の第2回では語られなかったことを書いておきます。あの演歌の歌声の持ち主で、エンドロールにも名前が出てくる「阪井洋一」なる人は、歌手ではなくて、実はラム監督の知り合いの、日本の映画製作配給会社ギャガコミュニケーションズの社員だそうです。
 ……それにしては歌がウマかった。

 きのう、10月24日、第19回東京国際映画祭出品の香港映画 『I'll Call You』 を観に行きました。

 映画の上映のあとには監督のラム・ジーチョン氏を迎えてのティーチ・インがありました。質問で手を挙げた観客の何人かと監督による質疑応答がありました。彼らの質問と監督の回答は、学芸員Kにとっても興味ある面白い内容でした。

 ところが、きのう家に帰って夜、寝ながら、

 「半年前に香港でこの映画を観たときから疑問に思っていたことがあった。なのに、きょうのティーチ・インでは監督に質問することを忘れてた!…というより、そもそも質問することすら考えてなかった!」

 ということに思い至りました。布団の中で後悔しきりでした。

 で、きょう、朝起きたとき、ふと、

 「きょう夕方上映する 『I'll Call You』 の当日券はあるのか? あるなら、もう1回行って、上映後のティーチ・インで太っちょラム・ジーチョン監督に質問するぞ!」

 と思いたちました。

 ネットで見てみたら、東京国際映画祭では、各作品とも、当日券を設定しているという。そこで、映画館のサイトに行き、『I'll Call You』 の当日券の様子をみてみました。すると、すごくいい席が残っているではありませんか!

 ということで、いきなり自分でも予想していなかった、本日の 『I'll Call You』 のチケットを、きょう、当日の朝9時過ぎにゲット。しかも、映画を観るのに良さそうな、真ん中の列のど真ん中の席が手に入りました。

 香港でのロードショーの2度の鑑賞から数えて、きょうで4度目の 『I'll Call You』 です。自分でも予期せぬことでしたが、結局、以上のような経緯で、きょうまた 『I'll Call You』 に行ってきました。

 そして上映後の、観客と監督を交えてのティーチ・インで、監督のラム・ジーチョン氏に、学芸員Kが香港でこの映画を観たときから疑問に思っていたこと(すご~く小さなことですが)を質問してみました。

 詳細は追って書きます。

 第19回東京国際映画祭に出品された香港映画『I'll Call You』を観てきました。場所は六本木ヒルズにあるTOHOシネマズです。
 (前回の記事はココ。「香港なんでもケンショウ堂」で書きました関連記事はココ。)

 上映後には監督のラム・ジーチョン(写真)が出席してのティーチ・インが行われました。学芸員Kが知らなかった、作品中に流れる日本演歌のことも監督の口から聞くことができました。ラム・ジーチョンは映画 『少林サッカー』や『カンフーハッスル』でその太った身体で熱演しているので、俳優としてご存じの方も多いと思います。彼の初監督作がこの 『I'll Call You』 です。

 いま、少し時間がないので、詳細は追って書きます。とりあえず写真です。
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 ティーチ・インのあとしばらくたって映画館の外に出てみたら、六本木ヒルズの森タワーのふもとで、ファンが取り囲むなかラム・ジーチョンが香港のケーブルテレビ「娯楽新聞台」の取材を受けていました。『少林サッカー』で見たときには気がつかなかったけど、エクボがあるんですね。

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 その取材が終わるのを見計らって、群がる他のファンといっしょになって学芸員Kも彼からパンフレットにサインをしてもらいました。「林子聰」(ラム・ジーチョン)と書いてあります。

 映画は女性の観客が圧倒的に多かったです。

 ●東京国際映画祭の公式サイトはココ
 ●『I'll Call You』公式サイトは、ココに行って、
  画面下の「FILMPROJECTS」→「PROJECT2 HONG KONG」で行けます。

 朝夕めっきり寒くなりました。だから思いっきり時機をはずしました。ユニクロ&ゴールデンハーベストのコラボTシャツです。その改良型2号を作ってみました。
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(ちなみに7月に作った第1号のはコレです。 今回は白地のTシャツにプリントしました。第1号と同じくゴールデンハーベストのオープニングタイトルをイメージしてデザインしました。青のバックと赤のロゴの組み合わせはややドギツイのですが(写真では青いですが実際は藍色に近いのでもう少しマシです)、映画のオープニングタイトルのようにバックを黒にするとかなり重い雰囲気になってしまいます。灰色のバックも考えましたが、現在のところこれがベターか。「嘉禾」のロゴは前回よりもさらに大きめにしました。本当のタイトルではこのロゴはもっと小さいです。

 今回は、オープニングタイトルの下に「嘉禾娯樂事業集團 Golden Harvest Entertainment Group」を入れました。

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 実際には正しくは「嘉禾娯樂事業(集團)有限公司」と表記されるようですが、収まりのいいように「(集團)」のカッコをはずし、「有限公司」も省きました。

 学芸員Kはゴールデンハーベストが好きで、いわば「ゴールデンハーベスト萌え」なのですが、さらに「『集團』の文字萌え」なのです。

 「集團」とは言うまでもなく「集団」で、グループの意味。香港の街で見かける「集團」の文字は、多くの場合、企業グループを意味しています。日本で言えば「松下電器グループ」とか「芙蓉グループ」とか「阪急・東宝グループ」みたいな感じだと思います。
 香港に行くと、街中でよくこの「集團」の表記に遭遇します。建築中の超高層ビルに大きな垂れ幕がかかっていて、そこにたとえば「長江集團」などと特大文字で掲げられていたりします。

 この「集團」の文字に、トキメいてしまうのです。これが日本の街中でカタカナの「グループ」という文字を見たとしてもトキメキません。なぜそうなのかは自分でも説明しづらいのですが、香港で彼らが使う自分たちの母語の中文―――日本人が言うところの「漢字」―――をストレートに使うところにものすごくカッコよさを感じるのです。さらにこの「集團」の表記には、なにかすさまじくダイナミックで勢いのよさを感じます。もちろん、当の香港の人々は当たり前に中文表記しているだけで、そんなこと思ってもみないでしょうけど。

 このブログを見ている方で、この「集團」に同じような印象を抱いている人、「『集團』の文字萌え」の人はいませんか? あるいは、香港(あるいは中国や台湾など)で、中文表記でカッコいいと感じたり、なぜか知らないけど萌えるものがある、という方はいますか?

 さて、背中側。第1号と同じ、エンディングの「劇終」を入れましたが、こっちにも「嘉禾娯樂事業集團 Golden Harvest Entertainment Group」を入れました。
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 このTシャツ第2号は、実は9月に作ったのですが、2回ほど着ただけで涼しい秋を迎えてしまいました(笑)。

 ところで、最初に作った黄色地のTシャツのほうですが、洗濯を重ねているうちに、やはりプリントの部分が少しだけくたびれてきました。

 我ながら物好きだとは思いますが、第2号Tシャツ製作報告でした。

 香港から英文のメールが届きました。Wong Ha Pakさんという方で、ネットで検索していたら「香港なんでもケンショウ堂」の「今はなき大映画館たち」を見つけたとのこと。彼も映画館のことを書いているという。さっそく彼のブログ「戯院誌 Talk Cinema」に行ってみました。すると、学芸員Kも「今はなき大映画館たち」で紹介している嘉禾戯院はじめ各映画館のたどった道などがつづられています。当時のチケットの写真もアップされています。

 香港の同志からメールをもらったことは大変嬉しかった! もしかしたら、学芸員Kが香港の映画館で映画を観ているとき、隣の席に座ってたのがWong先生(さん)だったりして(^o^)。(なお、「戯院誌 Talk Cinema」でもWong Ha Pakさんの名で記事を書かれていますので、ここでも同氏の名前を伏せずにご紹介させていただきました)

 二人で意気投合し、お互いのブログとサイトを紹介しようということになりました。で、さっき、「戯院誌 Talk Cinema」に行ってみたら、すでに「香港なんでもケンショウ堂」が紹介されていました。先をこされましたなあ(^v^)。

 さあ、きょうから東京国際映画祭。と言っても、行くのは24日の『得閒飲茶(英文題名「I'll Call You...」)』 1本だけですけど。

 学芸員Kがよくお邪魔する、香港映画の字幕でおなじみの水田菜穂さんのブログ「HongKong Addict Blog」で、嬉しい記事を発見。

 なんと3月に香港で観た映画『I'll call you』(中文原題:『得閒飲茶』)が、第19回東京国際映画祭に出品されるという。しかも、字幕を水田菜穂さんがやられるとのこと。拍手ッ!!

 この映画と主演のアレックス・フォンに関しては、学芸員Kが香港から戻ったあとでサイト「香港なんでもケンショウ堂」にも書いたので、こちらを参考に。ただし、けっこうキモの笑えるシーンのネタばらしがあります。もし、この映画を観に行かれる予定の方は、記事中盤の『I'll call you』の部分を飛ばして読むか、映画を観終わった後にでもお読みください。

 実は、かつてはよく行っていた東京国際映画祭なのですが、ここのところ、小さい子どもがいることもあり、同じく香港映画好きの妻を置いてひとりで行くのも味気なく、だからまったくのノーチェックなのでした。

 でも、この映画が来るなら話は別。3月の香港はひとりで行き(ハ? 香港へひとりで行くのは味気なくないのかよ?(笑) )、そのときちょうど封切られた『I'll call you』を観たのですが 面白かったのでぜひとも妻にも観てほしいなと思ったのでした。もしDVDでも出たらTSUTAYAで借りて二人で観ようかなと考えていたのです。ところが、映画祭に来るという!  都合がいいことに、2回ある上映のうち、昼にやる回は、子どもが幼稚園に行っている間に観に行って帰ってこられる! ということで、映画祭の公式サイトで確認したらチケットがまだ残っていたので、予約しました。

 監督は『少林サッカー』でおなじみのおデブさんの、ラム・ジーチョン。彼がこの上映にゲストでやって来るとサイトに載っていたので、会えるかもしれない。香港ではうかつにも彼が出席したプレミアショーを見逃したので、予定どおり来日して会場でお顔を拝見できればラッキーです。

 この映画、小さな作品ですが、学芸員Kはけっこう楽しく笑えました。サイトでも書きましたが、特に日本人ならちょっとのけぞるお笑いシーンもあります。興味のある方は、まだチケットがあるようですので、映画祭公式サイトの『I'll call you』のページをご覧ください。

 ちなみに、この映画祭公式サイトはリンクが極めて不親切というか、不可解です。上記の『I'll call you』のページに行ってチケットを予約するには、10月24日、25日の回のいずれの予約の場合も、「10月25日」のほうの「前売券購入」をクリックします。ここから「ぴあ」の該当ページにいけます。ところが「10月24日」の「前売券購入」をクリックすると、なぜかいったん、「ぴあ」の映画祭トップページに行ってしまい、迷子になってしまいます。この場合はこのトップページの真ん中に並んだリンクから「第19回東京国際映画祭/アジアの風」をクリックすれば行けますが、初めて行くと非常に戸惑います。どうして並列に並んだリンクの片方だけが直接行けて、片方が迂回させる構造のリンクになっているのか不可解です(映画祭さん、こういうリンクは非常にストレスを感じさせて、予約寸前でお客を逃しますゼ)。他の映画も同じみたいです。ということで、念のため、ぴあの該当ページにリンクをはっておきます。ここです。

 ところで、「香港なんでもケンショウ堂」の記事を読まれた方もいるかもしれませんが、学芸員Kは、この映画を観た3日後に、セントラルの街をトボトボ歩いていたら主演のアレックス・フォンにばったり遭遇したのでした。そのてん末はサイトの記事をご覧ください。ただし、こちらもややネタばらしに近いキーワードが入ってますので、素の状態でこの映画を観たい方はご注意ください(写真もあります。写真だけなら映画を観る前でも大丈夫です)。記事はこちらです。

 久しぶりの東京国際映画祭、楽しみだワイ!

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