ゴールデンハーベスト・スタジオ訪問記 その5

| コメント(2) | トラックバック(0)
 その4からのつづき。 最初から読まれたい方はこちら
 

 鉄の扉が開けっ放しの入り口をくぐると、暗いホールというか廊下があり、それをはさんで両側にスタジオがありました。

 私はTさんのあとにくっついてそのひとつに入りました。

 いくつものライトから放たれる強い光が、入ってすぐのところに組まれたセットを照らしています。

 「あッ、ユン・ピョウだ!」

 私は心のなかで叫びました。

 セットのすき間から見えるその光の中に、ユン・ピョウが立っていました。

 映画やビデオで見たあのユン・ピョウがライトに照らされていました。

 当時の旅日誌を読み返すと、こんなことが書いてあります。

 なんと、ユン・ピョウが格闘シーンを撮っているところだった! ライトのいくつかはこっち(私たち)に向いていた。T氏は 『今、撮ってるからのぞかないように!』 という。

 そうです。まさしく本番の真っ最中、しかもアクション場面の撮影だったのです。

 Tさんと私は、セットの陰に隠れました。だからそれ以降は撮影シーンを見ることができませんでした。

  『レディ.........アクション!』 のかけ声で、相手役の大きな奇声とセットにぶつかる激しい音。OKが出ないのか、それが何回も繰り返される。(旅日誌より)

 「ウヤーッ !!」 「イアアアッ!!」 と、香港映画でよく聞く迫力の格闘シーンの怒声。木とベニヤ板で組まれたセットが壊れるかと思うほどの激しい音と振動。

 ライトに照らされた表側とは違って、セットの裏は暗いです。Tさんと私は音を立てぬように身をひそめました。

 Tさんは私といっしょにしゃがみながら 「あれ、よわったなあ。出られなくなっちゃたよ」 と小さな声で言いました。スタジオを出るには、セットの前面に出てカメラの前を通らなくてはならなかったからです。

 実は私はスタジオに入ってからずっと持参のカセットテープレコーダーを回していました。テープを再生してこのときのTさんの「よわったなあ」の日本語を聞くと笑ってしまいます。

 セットに身をひそめながら、私はTさんに聞きました。

 「(ユン・ピョウに)会ってもいいですか?」

 「いいけど、くれぐれもじゃまにならないようにしてください」

 「いつ会っていいです か?」

 「そりゃあなた、あなたが自分で判断してください。雰囲気でいいなと感じたら。でも、あまり長い時間いてははだめですよ。ユン・ピョウで10分、ジャッキーで10分くらいね」


 このやりとりも録音されて残っています。でも、聞き返さなくてもこのときのTさんとのやりとりは今も覚えています。

 頃合いを見計らって、

 Tさんは 『くれぐれもじゃまにならぬように』 と言い残して去って行く。(旅日誌より)

 文字で書くとTさんはつっけんどんな感じに聞こえますが、言葉の雰囲気は実際はそんなことはありませんでした。

 ここまで日本語で案内してくれた親切なTさんは、カメラの回っていない一瞬のスキをみて、私のお礼の声を背に受けながら去って行きました。

 私はセットの裏にひとり残りました。     

 何回かの 『アクション!』 と セットにぶつかる激しい音。

 しばらくして笑い声が聞こえ、なごやかな雰囲気になった感じがしたので陰から顔を出してみると、皆休憩している。
(旅日誌より)

 いちばん近くにいたスタッフと思われる人に近づいていき、私は上気した気持ちで、日本から旅行で来たのですがと前置きして、 「ユン・ピョウに会っていいですか?」 と聞きました。

 そのスタッフは 「ジャペーン? ウエルカム!」 と言いました。

 いきなりセットの裏から現れて近寄ってきた私に対して、こんな返事がかえってくるとは予期せず驚きましたが、そのひとことで一気に緊張がとけ私はホッとしました。

 そのスタッフの彼は、わざわざ私をユン・ピョウのところまで連れて行きました。そして、彼は二言三言何かを広東語でユン・ピョウに告げました。

 するとユン・ピョウは私の方に顔を向け、小さくうなずきながら満面の笑みで 「ハイ!」 と言いました。

 本当にこぼれるような満面の笑みでした。

 つづく。

 --------------------------------------------------------

 前置きの長い文にて失礼しました。
 ここまでは、サイトで書いた記事を加筆修正したものです。

 次回、その6から、一気に写真をアップする予定です。
WEB拍手

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://kengshow.com/mt/mt-tb.cgi/6650

コメント(2)

目の前にユンピョウ、満面の笑み。がくがくぶるぶる感動ー

hongkongloverさん

私もなんだかんだいって足が中に浮かんだ感じでした。
続きはいましばらくお待ちを。

コメントする

about 香港つめホーダイ

当ブログ発信場所

My desk
このブログは
アジアの片すみの小さな家の
地下室のデスクから
    香港迷同志へ発信しています    

Google香港

Amazon

Amazon

Amazon

商務印書館 東京支店

私のサイトの方のCM

Keng Show Do  CM
※ブラウザのJavaScriptをONにして、Flash Player9以上をインストールしてください。
Get Adobe Flash Player

嗚呼、いまはなき香港の大映画館たちよ! by 学芸員Kさん

下の「コマーシャライザー」を
クリックすると
大きな画面で見られます。

カンタンCM作成サイト コマーシャライザー

つめホーダイ Slide Show

Tsume Houdai  Slide Show
photo by Gakugeiin-K

Love it ! Hong Kong

Ding Ding HK Tram

香港啓徳機場

当ブログの購読は…

香港なブログ【準備中】

香港関連サイト【準備中】

Twitter

Twitterボタン

This blog made by

Powered by Movable Type 4.27-ja

サイトもどうぞ

Googleブログ内検索

最近のコメント

  • 学芸員K: hongkongloverさん 私もなんだ 続きを読む
  • hongkonglover: 目の前にユンピョウ、満面の笑み。がくがくぶ 続きを読む


     この記事について

このページは、学芸員Kが2010年7月11日 11:25に書いた記事です。

ひとつ前の記事は「ゴールデンハーベスト・スタジオ訪問記 その4」です。

次の記事は「NHK BS「 熱中スタジアム」予告編」です。

最近の記事はインデックスページで見られます。

過去の記事はアーカイブページで見られます。

Number of visitors

メール

メール

電影海報展覧会


香港クレージー作戦
1963年 東宝映画

得閒飲茶 ill call you
2006年 Focus Films

BLADERUNNER
1982年 Ladd Company

Enter the Dragon
1973年 Warner Bros.
Concord Pictures

Rosa
1986年 Boho Films

Four Travel