前の記事に対する阿郎さんのコメントで、「蛇湯に至っては『現地コーディネイタも突っ込まんかいッ』と叫びたくなる展開。」というのがありました。

 たしかに、現地の香港人コーディネーターがいたとすればの話ですが、彼は、CMの撮影現場でこの蛇の丸ごと姿煮スープの小道具を見て 「そんな蛇スープなんてありませんよ」とスタッフに突っ込まなかったのでしょうか。

 それで思い出しました。

 これ。


 これはブルース・リーの「ドラゴン怒りの鉄拳(精武門)」(1972年)です。ブルース・リーが敵の日本人道場に殴り込みに行くシーン。

 1分10秒あたりから出てくる、敵の日本人役の人がはいている「袴(はかま)」を見てください。

 袴が「うしろ前」です。

 この映画に出てくる日本人役の袴が、全員がうしろ前なのです。

 ブルース・リー ファンの間ではつとに有名な、この「ハカマうしろまえ事件」。

 この映画には日本人俳優が何人か出演しています(上のハカマの人は日本人ではありません)。

 その俳優のうち、敵のボス、鈴木役としてクライマックスでブルース・リーと死闘を繰り広げるのが、橋本力という俳優です。(そのシーンはコチラ。<いちばん最後、ボスの鈴木がブルース・リーの蹴りで障子をやぶって吹っ飛んでいくシーンで、空中に吹っ飛ばされているのはスタントマン時代のジャッキー・チェンというのは有名な話です>)

 映画公開から20年が経って、1995年、洋泉社から「映画秘宝 ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進!」という、超が付くマニアックな本が出ました。

eigahihou_101dragon.jpg この本の中に、「ブルース・リーに蹴られた男 橋本力」と題した、橋本力さんのインタビュー記事があります。

hashimoto_chikara.jpg インタビューの中で、この「ハカマうしろ前」のことが出ていました。

 —-日本人が袴を後ろ前にはいてましたが。(太字原文ママ)

 橋本 (笑)おかしいよって言ったんだけど、
     衣装さんが 「絶対これでいいんだ」って
     言って、押し切られちゃいました。まあ、
     花魁の太鼓帯をイメージしたんだろうね。

 橋本力さんは「おかしいよ」と突っ込みました。でもスタッフが言うことを聞かずこんな珍事になってしまったということです。

 ジャックスのCMも、撮影現場で現地コーディネーターが 「そんな蛇スープありませんよ。蛇は切り刻んで鶏肉のささみみたいな感じですよ!」 とスタッフに突っ込んだものの、スタッフが 「絶対これでいいんだ。鶏肉のささみじゃ絵にならん」 とか言ったのかも。

 蛇スープのアップの部分は日本で別撮りした可能性もありそうですが。