きのうNHK BSプレミアムで放送したスティーブ・マックイーン主演のアメリカ映画「ブリット」を録画しておき、夕べ、ひさしぶりにちょっとだけ見ました。
この映画、子どもころにテレビの洋画劇場の吹替版を観たきりか。
これがオープニング。
今から43年前の1968年の作品。
アメリカ映画がすごいと思うのは、こういう凝ったオープニングを見たとき。同じ時代の日本映画はオープニングなんておそらく100本の映画のうち95本までは、白や赤のタイトル文字が背景に重ねてバーンと出るだけだったと言っていいんじゃないか。香港映画なんてそのタイトル文字が揺れてるし。
でも、アメリカ映画は今みたいにコンピューターを使わなかった時代にこんなに複雑で凝ったオープニングを作ってしまう。
いまはコンピューターがあるおかげで、香港映画だって、「これがあの香港映画か?」と思うほど凝ったオープニングが当たり前になっている。もう文字も揺れてない。
逆に、製品としての映画の造りの差が、コンピューターのおかげで現代はほとんどなくなった分、制作国のお国柄というか個性もなくなりました。それが少し残念な気もします。
肥えた目の人から見れば違いが分かるのかもしれないが、私など、現代の映画はフィルムの色合いが、もうアメリカ映画も日本映画も香港映画もみな同じに見えてしまう。もうみんなクリアでリアルで、なんかビデオみたいです。
香港映画も今は目茶苦茶キレイだし。
で、話もどって、この映画「ブリット」は、私はストーリーはまったく覚えていなかったのですが、有名なのはこのカーチェイスの場面です。
今回もここだけは見直した。せっかくハイビジョンで録ったし、大画面で見るのにちょうどいいです。
1968年当時、このカーチェイスのシーンを観た日本人は、多分、観客も映画関係者も 「アメリカはやっぱりクルマの国だ」と思ったに違いない。
ところで、このカーチェイスシーンに出てくるマックイーンが運転しているフォード・マスタングのコンセプトを、そっくりマネして作ったのが、トヨタのセリカです。
で、このカーチェイスのシーン、よく見ると、エキストラ車両として走っているフォルクスワーゲン・ビートルがおかしなタイミングで何度も出てきたり、うまくシーンがつながっていない部分もあるので少し気になります(だが、アカデミー賞の編集賞受賞)。
でも、坂の多いサンフランシスコの街をうまく使ったこのカーチェイスシーンは、いま見てもなかなかの迫力です。
いまではこれ以上の迫力のカーチェイスシーンを香港映画で見ることができますが。
で、なんで、香港と関係ないこの映画をこのブログで取り上げるのかというと、この「ブリット」の音楽は、香港が世界に誇る巨星ブルース・リーの代表作「燃えよドラゴン」(1973年 アメリカ/香港)と同じ、ラロ・シフリンによるものだから。
夕べ、久しぶりにこの「ブリット」を見て流れる音楽を聴いて私は、「同じ作曲者だけあってやっぱり音楽の雰囲気が『燃えよドラゴン』と似てる!」と思ったのでした。
こっちが「燃えよドラゴン」。
上に貼った最初のふたつの「ブリット」の映像で流れる音楽と、「燃えよドラゴン」とを聴き比べると、楽器の使い方とか雰囲気がよく似てると思いませんか?
メロディは全然違うが、細かな部分の小ワザや雰囲気がなんか似てる。
ここでは紹介しきれませんが、ほかにも「燃えよドラゴン」の各場面の音楽のちょっとしたところが、すごく「ブリット」の音楽と似ています。
ブルース・リーのファンで「燃えよドラゴン」を何回も見て劇中に流れる音楽が体内に刷り込まれた人は、この「ブリット」の音楽を聴いたら、きっと「似てる!」と思うはず。
そりゃ、同じ人間が作った音楽なんだから当たり前ではあるが。
いま思えば、低予算映画の「燃えよドラゴン」でラロ・シフリンに音楽をやってもらったのは、幸運なことでした。
何かの本で書いてあったと思うのですが、「燃えよドラゴン」の制作途中で、ラッシュフィルムを見た制作サイドが、予想以上に面白くて「これはひょっとしたら化ける」と、音楽のランクを予定より上に上げてラロ・シフリンに頼んだんじゃなかったかな。完全なうろ覚えですが。
「燃えよドラゴン」という作品と、ラロ・シフリンの作曲した同作品のメインテーマ曲は、切り離すことのできない不可分のものです。
世界中の人々にとって、ブルース・リーといえばイメージされるのがこのテーマ音楽です。
「燃えよドラゴン」 劇中のメインテーマ コレ
サウンドトラック盤のメインテーマ コレ
いまだに「香港」とか「カンフー」とかがテレビで紹介されたり、バラエティ番組でお笑い芸人がいきなりブルース・リーのマネをしたりするときに、この「燃えよドラゴン」のテーマ曲が流れたりします。
ずっと前なんか、イギリスのテレビ放送で東京の羽田のモノレールが紹介されたときに、なぜかこのテーマ曲が流れたこともあった。イギリス人にしてみたら中国も日本もどっちでもいいから、ごっちゃにして手っ取り早く東洋とかそういうイメージを持たせる便利な曲がこれだったのかも。
あと、ブルース・リーとの関連で、もうひとつ。
これは超有名な話ですが、この「ブリ
ット」に主演したハリウッドの大スター、スティーブ・マックイーンは、当時世界的にはまったく無名のブルース・リーとは武道を通して師弟関係にありました。もちろんブルース・リーのほうが先生です。
ブルース・リーのシアトルでの葬儀では、マックイーンがジェームズ・コバーンとともに棺を担ぎました。
そのマックイーンも早くにこの世を去りました。
そういえばスティーブ・マックイーンはスタントマンを使わないでアクションシーンを演じることも多かったので、そういう意味ではジャッキー・チェンの先をいってました。
アメリカ映画「ブリット」を見て強引に香港に結び付けての、今回も小ネタでした。
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