bettertomorrow2.jpg
 【参考】
 原題『英雄本色Ⅱ』 英文題名『A BETTER TOMORROW Ⅱ』 (邦題『男たちの挽歌 2』)
 ——————————
 先日の香港映画祭で上映された4作品のタイトル。
 『鐵三角』(英文題名:「TRIANGLE」)
 『父子』(英文題名:「After This Our Exile」)
 『男兒本色』(英文題名:「Invisible Target」)
 『天堂口』(英文題名:「Blood Brothers」)
 このように香港映画には、中文題名とは別に、昔から、ほぼ必ず、英文題名が付いています。
 ブルース・リー作品やミスターBOOシリーズを経て、ジャッキー・チェンが登場し、いろんな香港映画が日本にやってきた1980年代半ば。
 このころ、私は、香港映画に必ず英文題名が付いているのは、単に 「イギリス植民地だから、『習慣的に」付いている』 のだと思っていました。あるいは、言い方は悪いけれど、香港映画には英領植民地映画としての「英語かぶれ」もあるのかな、と。
 で、その後何度か香港に行くうちに、香港の各映画館のロビーの壁に、その作品の上映許可証みたいなA4サイズほどの紙が必ず貼ってあることに気が付きました。作品の上映を香港政庁とか日本の映倫みたいなところが上映を認可した許可証だと思いました。
 その許可証は、英文の書類でした。中文表記もあるバイリンガルの書類だったか、あるいはこの英文許可証とは別に中文の許可証も併せて掲示されていたかは記憶にないのですが、少なくとも、英文の許可証がロビーに必ず貼ってありました。
 その許可証にはたしか、「TITLE」という名称の欄があり、その映画の題名が英文で書かれていました。
 この許可証を見て、私は、「香港映画は、英語を公用語とするイギリス植民地香港内での映画館での上映認可を申請をするためには、英文タイトルが便宜上、要は 『書類上』 どうしても必要なんだな」 と思いました。
 で、そうだとすれば、香港映画の英文題名は、本来は、植民地香港での申請上どうしても必要だから付けられたことになります。
 ところが、そのわりには、すでにかなり昔から、英文題名には 「遊び」 があるというか、「 中文原題に添える 『副題』 」 としての意味合いがあるようにも思えます。
 上の写真は、日本でも香港映画のベンチマークとなり話題となった映画、『英雄本色』です(正しくは写真はその続編)。この原題 『英雄本色』 の意味は、「英雄とはかくあるべし」ということだと思いますが(自信ありませんので、ご指摘歓迎)、英文題名は原題とはまったく関係なく 『A BETTER TOMORROW』 です。直訳すれば『より良きあした』。
 また、たとえば1970年代前半のブルース・リーの『ドラゴンへの道』の中文原題は『猛龍過江』です。主人公が海を越えてイタリアにわたって活躍するのでこの題名なのだと思いますが、英文題名は『The Way of The Dragon』です。
 この記事の冒頭で挙げた、先日の香港映画祭の4作品では、中文原題を訳したものは『鐵三角』だけで、それ以外はすべて中文原題を訳した題名にはなっていません。
 こういうことを考えると、香港映画の英文題名は、「英文訳名」ではなく、装飾や副題としての役割を持っています。たいていの香港映画は、地元香港でのポスターに英文題名が「装飾的に」入っています。
 ここまで書いて、うまくまとめられないのですが、何を言いたいかというと、香港映画の英文題名は、実はけっこう微妙というか、作品によっては、相当アバウトに付けられているんじゃないかと思うのです。雰囲気重視というか。たとえば、『A BETEER TOMORROW』って、あの作品の「英文題名」としてどうなんでしょうか。独立したメインタイトルとしての、一個の「英文題名」としては「すごくビミョーな感じ」がします。どっちかというとこの英文題名『A BETEER TOMORROW』は、最初っから中文原題の 『英雄本色』 に添える 「副題」 として付けられたような感じがします。
 たとえば、というか、たとえとしては、これは特にどちらが「副題」というわけではないので適切ではありませんが、今ヒットしている日本映画を引き合いに出せば、
 『ALWAYS 三丁目の夕日』
 みたいな…。そういう見方でみてみると……
 『英雄本色 A BETTER TOMORROW』。
 こうみると、最初に挙げた香港映画祭の4作品のうち、『鐵三角』(英文題名:「TRIANGLE」)以外の3作品は、いずれも英文題名が中文のメインタイトルに添えられる「副題」のように思えます。『父子』に対する「After This Our Exile」しかり、『男兒本色』に対する「Invisible Target」しかり、『天堂口』に対する「Blood Brothers」しかり。これらは、皆、実質上、『ALWAYS 三丁目の夕日』 と同じような感じになっているのではないでしょうか。
 で、そうだとするなら、とどのつまり、香港映画というものは、香港返還後10年たってもなお、そのほとんどすべての作品に、最初から英文の「副題」が付いているという、ものすご~く 「特殊な状況」 になっていることになります。
 この続きはまた気が向いたとき書きます。
 ところで、さっき書いた、「上映許可証」。ハッキリと確かめたわけではないのですが、香港が中国に返還されたのちも、映画館のロビーに貼ってあるように記憶しています。しかし、「英文の許可証」が今もあるかはよくわかりません。どなたかお知りの方がいれば教えてください。