韓国映画のタイトルみたいですが、「私の頭の中の香港」はこうなってます。

map.jpg

 南北が逆なのです。この「症状」は初めての香港旅行から続いております。

 初めての香港旅行で、私は彌敦道に面した油麻地のホテルに泊まりました。いまはもうないフォーチュナホテルという名の中級ホテルです。私は毎日そのホテルから彌敦道を歩いて南下し、尖沙咀のプロムナードから対岸の香港島の摩天楼を眺めていました。

 それを、滞在した20日間続けているうちに、私の頭の中では、油麻地から尖沙咀に行くときに南に「下る」のではなく、なんとなく「上る」イメージができてしまいました。そして、尖沙咀から香港島を眺めるうちに「右が上環、左が銅鑼湾」というような絵柄が定着してしまいました。

 これが南北逆転の原因です。

 でも、九龍サイド在住者や九龍のホテルの宿泊者で同じような症例のある人なんて、当然ながら聞いたことがないので、私だけの症状かもしれません。単なる方向オンチか。しかも重症の。

 いま通勤電車のなかで「現代の香港を知るKEYWORD888」という本を読んでいます。この本には膨大な情報が詰まっていているので、気おくれして、今まで読みそびれていました。しかし、やっと本棚から引っぱり出して毎日電車の中で読んでます。やっと半分くらいまで読みました。すごくお面白い本です。香港の知らなかったことがたくさん出てきて「へえー!」の連続です。特に些細なことで新しい発見があると嬉しくなってしまいます。この本は香港ファン必読の書だと思います。

 ただ、私にとってはひとつ困ったことがあります。この本には香港のいろいろな地域や場所の解説が載っているのですが、「香港島北東部」とか「銅鑼湾の南」とか「中環の西」とか、方角をまじえた解説が出てくるたびに、私は頭の中の香港をいちいち180度ひっくり返さなければならないのです。

 この「180度ひっくり返し」の繰り返しで、私はいま、頭の中の香港の矯正を目論んでいます。電車のなかでふと本から目を離し、焦点さだまらぬ目で斜め上天井を見上げた思案顔の人間がいたら、それは週刊文春の中吊り広告を見ているのではなく180度ひっくり返し矯正真っ最中の私かもしれません。