fuyuno_sonata.jpg きのう(3月26日)の朝日新聞の朝刊に出てました。ソニーピクチャーズの「『冬のソナタ』DVD発売延期のお詫び」の一面広告。

 なんでも、韓国のテレビ放送時の完全オリジナル版DVDを3月26日に出す予定だったが、劇中の背景に流れる一部の音楽の著作者やレコード会社が不明なため当事者に承諾を得ることができなかったり、また著作者が明らかでも承諾が得られなかったり、なかには曲名すらわからないものもあって、権利問題がクリアされなかったのだという。

 同じ文面がここに載ってます。
 http://bd-dvd.sonypictures.jp/fuyusona/

 広告には、これら不明な楽曲の一覧が載っていて、情報をお持ちの方は連絡をください、と呼びかけています。下の写真。クリックすると拡大して見られます。

fuyuno_sonata2.jpg ここでちょっと疑問。

 じゃあ、いったい韓国で最初にこのドラマを放送するときは、音楽の権利関係はどうなっていたのでしょうか。放送での使用は承諾を得ていて、DVDなどの二次使用の契約は予期していなかったのか。でも、それにしたって、中には曲名やレコード会社まで不明な曲があるというのは??? その音源はラベルなしのカセットテープか?

 冬ソナはテレビで通しで観たことがあります。でも、あまり印象に残っておらず(私は韓国ドラマなら「悲しき恋歌」「天国の階段」の方が好き)、音楽のことはまったく記憶にないので、どういう音楽だったのかわかりませんが、いずれにせよ音楽の著作権はドラマ製作時はかなりアバウトだったと推測。

 冬ソナは注目度が高いし本数も出るから、売れに売れてあとになって訴訟でも起きたらエライことになってしまいます。こういう権利関係に対する認識は日を追うごとに高まっているだろうし、国を超えてボーダーレスになっているだろうし、だから隅々までクリアする必要があるので
しょう。

 「冬ソナ」の完全オリジナル版DVDの発売はこの先どうなるのでしょうか。ひょっとして最初から曖昧なままにして出しちゃったらよかったのかもしれませんが、著作権をクリアすることを宣言しているし、版元が小さなDVDの会社じゃなくて天下のソニーピクチャーズならば、権利関係を自らクリアすることは絶対条件ということかな。

 今はネットがあるから、冬ソナファンの人々がネット上でこれから不明の曲のいろんな情報を集める行動を起こすのだと思います。今回の新聞広告に出した情報提供の呼びかけも、ファンのネット上での行動を期待してのことなのかもしれません。

 でも、なんで発売日当日になって、でかでかと一面カラーで派手に広告を打ったんでしょうか。本来なら発売当日の広告を入れる予定だったスペースがあったからでしょうか。(これは仕掛けで「奇跡の発売」までのステップ? まさか)

 で、私はこのお詫び広告を見て、ふと、思った。

 こんな正々堂々とした正攻法でDVDを出そうとしたら、昔の香港映画だったら出せなくなってしまう。

 香港映画の劇中に流れる音楽は、アメリカなど外国映画のサントラ盤レコードを音源にしたりしたものが多数あります。それらはおそらく全部、著作権無視の無断使用です。

 あのジョン・ウーの「男たちの挽歌」も、おそらく承諾なしの無断使用で外国映画の音楽をバックに流しています。
 過去記事 http://kengshow.com/2006/06/post_5

 ジミー・ウォングのこの映画もメインタイトルがアメリカ映画の有名な音楽のおそらくレコードをそのまま使用。
 過去記事 http://kengshow.com/2009/09/post_310

 大胆だと思うのは、アメリカ映画のサントラ盤レコードのちょっとした何番目かの小さな曲を、もうしわけ程度に使う、というのではなくて、アカデミー賞作曲賞をとったような映画のメインテーマを使ったりしているということです。

 そういえば、香港のどこかの映画会社のオープニングクレジットで、映画会社のマークの後ろに流れる音楽がジョン・ウィリアムズ作曲の映画「スーパーマン」のメインテーマというのもありました。YouTubeで見ました。おそらくこれも無断使用。

 ブルース・リーの「ドラゴン危機一発」だって、劇中流れる音楽が、日本映画「大魔神」の劇中に流れる音楽と同じです。(これは「大魔神」をあとでテレビで観てぶったまげました。製作年からしてどっちが流用したかは明白)

 挙げればキリがないというか、観ているこちらも気づかないものも含めて、有名無名の音楽が香港映画では無断で使用されていたと思います。どの映画にどの無断使用の音楽があったか、具体的には記憶にありません。昔の香港映画は普通にそういうのがあったので慣れてしまい、無断借用のインパクトも薄れてました。

 同じような広告を香港映画のDVDで出したら、

 「お詫び 本日発売を予定しておりました香港映画「××ドラゴン必殺拳」の完全オリジナル版DVDは、劇中にジョン・ウィリアムズ作曲の『スター・ウォーズ』のメインテーマがちょっとばかり入っていることはそれは以前から知っておりましたが、先週、ジョン・ウィリアムズ氏に承諾を求めに伺ったところ、その時点で初めてこの事実を知った同氏の逆鱗に触れてしまい、話はそれきりになりました。」