「The Trams 電車」という本があります。
もう10年以上も前、神保町にある中華関連専門の東方書店で買いました。
龍美童(Lon Meitong)さんという方の画集です。
トラムのある街の風景や、トラムの車窓から見た街のひとコマが、水彩で描かれています。
香港で出版されたものですが、ページを開くと、序文や、夫や子どもへあてた謝辞の文が、中英文のほか、日本語でも書かれています。
奥付を見ると中英文翻訳者として別の人の名前が載っています。だから原文は日本語で、おそらく龍美童さんは日本人の方だと思われます。
見慣れた香港の風景を繊細に描いた水彩画。
その中のひとつが、これです。
このビル、知っている人は多いのではないでしょうか。
トラムに乗って銅鑼湾からシャウケイワン方面に向かって走っていくと、MTR太古站の手前、英皇道が大きくカーブして折れるあたりに、この大きなインパクトのあるビルが、道路のカーブに沿って壁のようにそびえています。
これです。私が撮影。なぜかビルの上を切って撮ってしまいました。

このビル、トラムに乗って香港の街の風景を楽しむ観光客にとっては、その名前は知らなくともインパクトの強さで、記憶に残る存在なのではないかと思います。
画集の龍美童さんにとっても、やっぱりインパクトが強いから絵の題材にしたんじゃないかと推測します。
このビル、ストリートビューで見るとこうなっています。
ポインタを画像にあててドラッグしてみてください。
一度、2000年頃、私はカミさんと、このビルに入ってみたことがあります。
トラムの2階最前列に座って街の風景を楽しんでいたとき、いつものようにこのビルが見えてきました。
停留所に止まるトラム。
私とカミさんはなぜか顔を見合わせました。
私 「入るか?」
カミさん 「うん」
「よし!」とすぐに席を立って、急いでトラムを降りました。
ビルの中に入ってみました。
ああー、こういう構造になっていたのか!
このビル、外から見るとやたら幅が広くて巨大ですが、
実は、この幅のまま奧まで中身の具がフルに詰まったビル、
というわけではなかった!
道路に面したビルは、まさしく壁のように建っていて、その奧は、くし状になって何棟かのビルが伸びていたのでした。
Googleマップを見るとよく分かります。
檢視較大的地圖
どうやって建てたのかは知るよしもないが、建物の名前が6つも付いています。建て増しをしていったのか? だったらまるで九龍城砦のようです。
ビルとビルの間は道路ではなく中庭のようになっていいました。店もありました。
巨大アパートの無数の窓が中庭をはさんで向き合う風景。トラムの走る表通りの喧噪とはまた別の、ここだけの世界。なんだかSF的でもありました。

アメリカ映画か何かで見た宇宙人のたくさん住むアパートのような、あるいは「スターウォーズ」の中に出てきた(?)、宇宙連合会議(?)の議場のような雰囲気。
私が撮ったこの写真だと伝わりにくいですが……。
ビルの廊下は、香港の古い雑居ビルの典型としてかなり狭かった。住民に紛れてどんどん進んでいくと、下に降りる階段があって、こんなところに!という地下に、惠康か百佳のスーパーマーケットがあって、ちょっと冒険した気分になりました。
上の画集の龍さんを検索したら、こんなサイトを見つけました。
表紙をクリックすると中身が見られます。
http://www.flip-flop.co.jp/art/lon/lone.html
追記:ストリートビューでこのビルの裏の通り(鰂魚涌街)に回ってみたら、そこから少しだけビルの裏側を覗くことができました。
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