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 きのうの23日は東京フィルメックスで「アイ・イン・ザ・スカイ」が上映されました。私は行けませんでした。以前、悠さんからのコメントで「絶対おすすめ」の作品だと推薦していただいたので、11月に入ってプレリザーブを入れました。しかし直後に23日に用事ができてしまい仕方なく取り消しました。ところが、その用事がキャンセルに……。「アイ・イン・ザ・スカイ」、観てみたかったです。
 さて、以前、私は、『香港クレージー作戦』という1963年に公開された古い日本映画をDVDで観ました。主人公たちがレストランを開くために香港に繰り出して大騒動という喜劇です。香港に行く飛行機の中で、クレージーキャッツのハナ肇が機内食に大喜びではしゃぐシーンがあります。飛行機に乗ること、海外に行くことが特別だったことがわかるシーンです。
 前にも書いたことですが、この映画をDVDで観たあと、気になって調べました。すると戦後、それまで制限されていた日本人の海外渡航が、業務渡航に限って自由化されたのがまさにこの映画が公開された1963年でした。だからハナ肇一行はレストラン経営の名目で香港に行けたというわけです。
 いままでに古い本を書店で見つけてはこのブログで紹介させていただきましたが、「カラーブックス 香港マカオ・台湾の旅」を見ても「日経新書 香港」を見ても、なにかこう、昔の方が憧れがあったぶんだけ今よりも海外旅行がキラキラ輝いていたんだなと思います。
 先日、久しぶりに神保町のアジア文庫に行ったら、「異国憧憬 戦後海外旅行外史」という本が平積みで置いてありました。奥付を見たら2003年11月の発行です。『香港クレージー作戦』や古いガイドブックなどで昔の海外旅行がどんなものだったのか興味があった私は、手に入れて読みました。
 面白かったです。
 「戦後海外旅行外史」なんて書名なので内容がカタイのかと思いましたが、そんなことはなく、構成もユニークな章立てになっています。著者の前川健一さんはタイに造詣の深いライターさんでアジアに関する面白い本をいくつも書いている方なのでご存じの方も多いと思います。
 章立てはこうです。
 第1章 映画と海外旅行
 第2章 音楽にみる海外
 第3章 放送と海外旅行
 第4章 雑誌・ガイドブックと海外旅行
 第5章 旅行記・滞在記
 第6章 若者、海を渡る
 第7章 旅行用品の変遷
 第8章 新婚旅行の変遷
 第9章 海外買い物史
 第10章 食と海外旅行
 第11章 外国語と異文化学習
 まとめ 日本人の海外旅行はどう変わったのか
 外国に行きたくても禁止されて行けなかった1960年代半ばまでや、その後渡航自由化になっても多くの人が経済的に行けなかった時代を経て、日本人がどのように海外旅行をしてきたかが各章に書かれています。
 この本、香港に関する記述がけっこうあります。戦後の海外旅行において、「香港旅行」というのが「ハワイ旅行」とならんで戦後の日本人にとっての海外旅行のステップのひとつだったということがわかります。
 まだ手に入ると思いますので、興味のある方はどうぞ。図書館にもあるかもしれません。
 もっと具体的に内容に触れようと思いましたが、また折をみて書きます。