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 黄さんから、著書 『憶記戲院記憶』 の通常装丁版の表紙の画像がメールで届きました。前回紹介した特別版とは違って、細工はないですが、スクリーンの周りがブラックアウトされていて、実際の劇場に近い雰囲気があります。
 表紙の真ん中の写真は、特別版と同じく中環にかつてあった「娯楽戲院」です。これは1950年代でしょうか。それとも1960年代でしょうか。
 当然ながら私はこの当時の娯楽戲院は知らないのですが、写真を見ると、かつての娯楽戲院は道路と道路が交わる、いわゆる角地に建っていたことがわかります。
 一方、こちらが、私が1986年3月に撮影した、娯楽戲院の写真です。新しいビルに建て直されています。この写真を見ると、ビルはともかく娯楽戲院は少し後退したのか角地にありません。
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 香港の映画館は―――現状を見ると、今は違うと思いますが―――たしか消防法か何かにより、角地に面していなければならない、という規制があったと記憶しています。しかし、この写真を見ると、1986年当事の娯楽戲院はその規制をクリアしていないようにも思えます。あるいは、ビル自体が角地に建っているからOKということなのか。もしかしたら、同じ所有者の大きな土地の中で、申請上は角地に面した土地での建造ということでクリアしたのか。
 あるいは改築された当事は、その規制がすでになかったか、あるいは形骸化していたのか。しかし、少なくとも娯楽戲院以外の1986年当時の映画館は、私の記憶にある限りでは、たしかにみんな角地に建っていました。参考写真はここ
 そして今。この娯楽戲院は1990年ころまでに潰されて、現在の娯楽行ビルが建っているわけです。この娯楽行ビルは角地に建ってます。下の写真は2006年に撮影した娯楽行ビル(右)です。
 1986年3月に撮影した位置と同じ位置からの定点撮影。最初の撮影からちょうど20年後の2006年3月に撮りました。
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 写真右のメインビルディングを見上げると、こんな大きな建物です。
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 1986年と2006年の二つの写真を並べてみます。ちなみに、1986年の写真ではクルマが交差点で右折していますが、2006年の写真では道路が改変され歩道でふさがれていて、右折できないようになっています。
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 ところで、ちょっと前になりますが、私のサイト「香港なんでもケンショウ堂」にお越しいただいたゲストの ishikawa さんから、この界隈の古い地図の画像を送っていただきました。1958年発行の地図です。サイトのほうで掲載させていただく予定なのですが、まだできていません。ここでその地図の一部を紹介させていただきます。
 この地図に娯楽戲院が載っています。はす向かいには、先日閉館した皇后戲院があります。皇后戲院が改築されて「陸海通ビル」になるのは1961年ですから、この地図の皇后戲院はまだ一戸建ての映画館だったわけです。
 ishikawaさん、大変貴重な資料の画像をありがとうございます。
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 1958年の地図をあらためて見て発見しました。当時も「娯楽行」という名前の建物だったんですね。そして隣のビルは「サウスチャイナモーニングポスト」です。
 いちばん上の『憶記戲院記憶』の表紙写真と現在の娯楽行ビルを見比べると……やっぱり、時代の流れを感じますねえ!
 追記:本の表紙の娯楽戲院と、私が撮影した1986年の建物は、よ~く見ると、どうも細部が似ているような気もしてきました。角のところの窓の形とかが……。もしかしたら、リフォームしただけで同じビルかもしれません。機会があったらちょっと調べてみます。