香港の朋友Wong Ha Pak先生のブログ、「戲院誌」の新しい記事で、「1970年代の大角咀・旺角界隈の映画館分布」を地図で紹介しています。
おそらくこの地図に載っている映画館の多くが1000席以上の大劇場だったのではないでしょうか。
かつての香港では、映画館というのは、1000席以上をもってしてスタンダード、「標準」でした。
手元にある「香港影視業百年」という本に、1968年、1985年当時の香港の各映画館のデータがリストになって載っています。
これを見ると、当時の香港のほとんどの映画館が、例えば1289席とか1454席とか1788席とか、そんな数字の大劇場です。(中には「麗宮戲院」の、なんと3000席というのまであります)
Wong先生がブログで挙げた映画館のうち、旺角にあった「南華戲院」や「文華戲院」などは、1990年代に、私も深夜上映の新作先行ロードショーで行ったことが何度もあります。
試しにネットで「南華戲院」「文華戲院」の写真を検索しましたが、見つかったのはひとつだけ(下写真)。
「南華戲院」です。もう晩年の姿。
撮影は2000年前後から以降か。
壁面を見ると、「南華」の看板が はがされた跡が付いているのがわかります。
1階はお店になっているが、本来はこんな雑居の状態ではなかったとも推測されます。
1階席フロアをつぶしてお店にしたのかもしれない。2000年に入ってから私が久しぶりにこの劇場に行ったとき、そんな状態の感じだったような記憶が、うっすらとあります。
ということで上の写真は南華戲院の最晩年のものか、あるいはすでに閉館後の姿か。
写真右下に「蘋果日報」のクレジットが入ってますが、どっかからの引用の可能性も大きい。なぜかといえば私が1986年に撮って私のサイトにアップした映画館の写真も、蘋果日報が引用して勝手に自社のクレジットを入れて使用していますから。
一方、下の写真は私が2006年はじめに撮った「南華戲院」(の跡)。
建物はそのままですが、改築のためにカバーがかかっていて、もう映画館じゃなくなってます。
かつての姿を知る者には、さびしい光景です。
Googleのストリートビューではこんな感じに写ってます。画像をポインタでドラッグして動かしてみてください。
檢視較大的地圖
なんだか訳のわからないビルになってしまいました。
この「南華戲院」もかつては大映画館でした。「香港影視業百年」に載っているデータによれば、1985年のデータで「南華戲院」の座席数は1278席となっています。
そんな大きな映画館でしたが、1990年代に入って、ほかの映画館と同じように、1階席と2階席が分断されました。
元の1階席、2階席が独立してそれぞれ「南華1」「南華2」という簡易シネコン状態になり、そして結局は消滅するという、香港の大映画館がたどる典型的なパターンとなりました。
で、かつての「南華戲院」の中がどうなっていたかというと……。
こんな大劇場でした。
天井が高くて立派な映画館だったことが分かります。
ただしいかにも昔ながらの劇場でイスが小さくてクッションが貧弱そうですが。
この写真は、私が香港のアンティークショップで80香港ドルで手に入れた、映画のパンフレットに載っていたものです。
日清戦争を描いた「甲午風雲」という中国本土から来た映画の、香港での劇場公開時のパンフレットに載っていた、「南華戲院」の広告。
これがその広告。写真をクリックすると拡大して見られます。
調べてみたら、この「甲午風雲」という映画は1962年制作の作品なので、このパンフレットも同年かそれに近い年ものだと思われます。いまから50年ほど前の南華戲院の姿です。
私が初めて香港に行った1980年代に入っても、まだまだこのような古い映画館は街のあちこちにたくさん残っていました。
こういう一戸建ての大映画館がたくさんあったのが、かつての香港でした。
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