この記事の続き。

 

映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」には、香港の街を近未来都市に見立てて、香港ロケで撮影したシーンがたくさん出てくる。撮影された街の風景の一部をCGで盛って「近未来都市」にしているのだ。

登場人物らが歩く繁華街もそうだし、遠景で捉えた高層ビル群もそうだ。

たとえば映画の中に出てくる「ハンカ・ロボティックス社」は、香港のリッポーセンタービルだ(実際のビルはこちら)。

あと、トラムに乗っていると遭遇する、例のこのビル。このビルは内側がすごいのだが、これも映画に出てきた。

広州とほほ日記でも紹介されていたが、その記事が出ている(こちら)。

この映画、香港の人はどう見たのか気になる。

近未来都市とは見えずにどうしたって「CGで盛った今の香港」に見えてしまうんじゃないか。だって普段暮らしてる街だから。

 

この「ゴースト・イン・ザ・シェル」も含め、近未来を描く映画に相当な影響を与えたと思われる、1982年製作の「ブレードランナー」(監督:リドリー・スコット、主演:ハリソン・フォード)は、SF映画の歴史に残るエポックメイキングな作品。

この映画の舞台となる近未来都市は「2019年のロサンゼルス」だ。

この近未来のロサンゼルスをデザインするに当たって香港がモデルとなったとする解説が、「ぴあ」増刊号の香港ガイド本にある。

そのことは以前に書いた。
http://kengshow.com/2009/10/17/post_325/

 

私にとっての「ブレードランナー」。
http://kengshow.com/2007/10/06/_25/
http://kengshow.com/2009/10/16/hong_kong/

ロンドン在住の青年は香港に近未来を見たのか。

 

小学生の頃に読んだ「小学一年生」とか「小学二年生」とかの学習雑誌の口絵で「30年後の世界」というようなものがよくあった。

30年後はどんな未来になっているかを、挿し絵とともに解説をしたページだ。

そこには自家用車が空を飛んでいたり人型ロボットが家事をしたりというような未来の様子が描かれていた。

でも、30年たっても全然そんな世界はやってこず、家の近所にはいまだに踏切があって電車が通過するたびにカンカンと音がなっている。

映画の世界でも、「2001年宇宙の旅」の2001年も「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」の2015年も「ブレードランナー」や「AKIRA」の2019年も、そこで描かれているそれぞれの未来の様子は、ちょっと勇み足に過ぎた。

「ゴースト・イン・ザ・シェル」は、「ブレードランナー」や「AKIRA」のちょうど50年後の2069年という設定らしいが、現実の世界はいったいどうなるんだろう。脳以外は全部人工物の身体なんて、どうみても実際にはこんな映画のようにはならない。

これらの映画(あるいは原作)は、作品を作っている方だって勇み足なのは十分承知のうえで、100年後や300年後という設定にはせずにあえて「ちょっと未来」という設定にしているんだろう。映画を見る我々もその方が身近に感じて面白い。

「フィフス・エレメント」の描く2214年の世界や、スピルバーグの「AI」なんかはいつの時代か語られていないが物語後半は冒頭の未来からさらに2000年後の世界だが、こういうはるか彼方の未来だとどうも親近感に欠ける。「タイムマシン」に出てくる「80万年後の世界」は、ここまで未来だとそれはそれで面白いけれども。

学習雑誌にあった「30年後の世界」というのは、つまりは「キミが大人になったら世界はこうなるかもよ」ということだが、映画でも、それがたとえ荒廃した世界であっても300年後よりも30年後の設定の方が、内容がどんなに荒唐無稽でも我々には面白いということなんだろう。我々がすでに大人になっていても。