前の記事で「香港国際警察」の日本公開版のことを書きましたが、この作品以上に、ある特定のファンから「日本公開版」が待ち望まれている映画があります。

 それはブルース・リーの「ドラゴン怒りの鉄拳」です。

 日本人に、「香港映画」というものがこの世の中に存在することを知らしめたブルース・リーの「ドラゴン危機一発」(一髪ではなく一発です)に続いて日本で公開されたのが、この「ドラゴン怒りの鉄拳」です。

 この「ドラゴン怒りの鉄拳」のVHSやDVD、ブルーレイは、すべて以下のようなオープニングです。

 【DVDなどに収録されているオリジナル版】


 これはオリジナルのオープニング。

 しかし、日本のマニアが望んでいるのは、当時、日本の劇場で公開された「日本公開版」です。

 日本公開版のオープニングは、上のオリジナル版とはまったく違います。

 これがそうです。

 【幻の日本公開版】


 オリジナル版とは全然違います。

 ただし上の映像は投稿者による再現版かもしれません。冒頭の漢字の「李小龍」のクレジットは日本公開版では出てこないのが本当だと思うので。

 この「日本公開版」は、世界マーケット用の国際版とか英語版とかいうのではなく、「日本劇場公開版」です。

 
 日本公開版で流れるこの歌はマイク・レメディオスという人が歌っています。なんか日本人っぽい英語です。

 このマイク・レメディオスさんは、最近になってブルース・リーのファンのイベントなどに呼ばれたりしています。

 ジャッキー・チェンの「香港国際警察」の日本公開版は、見たければ画質は悪いがVHSで見ることができます。

 しかし、「ドラゴン怒りの鉄拳」の日本公開版は、これまで一度もビデオなどでリリースされていません。

 なんか権利の問題がどうとかこうとかいう話ですが、よく事情が分かりません。フィルム自体がないということも言われてきました。

 この黒バックタイトルはドイツ版のDVDだったかにあるような話も聞いたような記憶がありますが、主題歌が英語なのかは不明。

 この日本公開版の誕生のいきさつは、よくは知らないのですが、またしても改変の得意な日本の配給会社の東宝東和が作ったか、あるいは作らせたんじゃないかと推測。(間違っていたらご指摘ください)

 おそらく、広東語ボーカルのオリジナル版のオープニングタイトルを見た東宝東和が、「うわ。これじゃ日本には向かない」と考え、日本独自のバージョンを作ったのではないか。

 実際の制作年度とは逆に一番最初に公開された、実質上のアメリカ映画「燃えよドラゴン」との、その雰囲気の落差が激しかったことも、「改変」の大きな理由だったと思います。

 すでに東宝東和は、前作の「ドラゴン危機一発」のオープニングなどの音楽を「カッコイイ」ものに差し替えたりしています。また「ドラゴン怒りの鉄拳」につづく第3作目の「ドラゴンへの道」も、配給元の東映洋画が日本公開版として改変をおこなっています。

 ちなみに実質上のアメリカ映画「燃えよドラゴン」の大ヒットを受けて日本で相次いで公開された、それに続くブルース・リーの香港作品は、「燃えよドラゴン」が英語音声だったこともあり、香港映画なのに「『中国語』のセリフじゃ日本人はうけつけないだろうから」という今では想像できない判断から、すべて英語バージョンにて公開されました。

 一連のブルース・リーの香港映画は、日本での劇場公開時、英語のタイトルに英語吹替のセリフで、一種の「無国籍映画」の形で公開されました。

 そもそもブルース・リーの香港制作の映画は、舞台設定がタイや租界時代の上海、ローマと、香港の匂いが皆無なので一層無国籍映画っぽくなりました。

 ブルース・リーの香港制作の映画は、これまで発売されたDVDなどでは、映画制作当時に作られた輸出バージョンの英語音声も入っています。

 しかし、ブルース・リーのファンが長年見たくても果たせないでいたのは、音楽やタイトルバックまでをも改変した、日本劇場公開バージョンです。

 
 なかでも、この「ドラゴン怒りの鉄拳」の日本公開版は、日本のブルース・リーファンがどうしても見たいものの筆頭に挙がるものです。

 ついには、マニアな人が、こんなものも作ってYouTubeにアップしています。

 ゴールデンハーベストの古いオープニングクレジットから始まる、当時の日本劇場公開バージョンを、おそらくいろいろな他のバージョンの素材を寄り合わせたり、余計なクレジットが出ないように映像をストップにしたりして作ったのだと思いますが、見事に「復元」しています。



 日本語字幕がタテ組みで右に出てくるという凝りようです。
 
 こんな「復元映像」までアップされている「ドラゴン怒りの鉄拳」。

 その「日本公開版」を「特典映像」として収録したブルーレイがついに発売される、ということを、つい先日、MIXIの友人で超熱烈的なブルース・リーファンのつぶやきで知った私は、驚きました。

 amazonで検索したら、あった。

fist_of_fury_bluray.jpg 11月にパラマウント ホーム エンタテインメントから発売されます。

 日本劇場公開時のポスターをパッケージデザインにしています。

 「ドラゴン怒りの鉄拳」「ドラゴン危機一発」「ドラゴンへの道」と、ブ
ルース・リーの死後完成した「死亡遊戯」のそれぞれの日本公開版を含むブルーレイがパラマウントから発売されます。

 12月発売の「香港国際警察」も11月発売のこれら一連のブルース・リー作品も、すべてパラマウントから発売されますが、パラマウントは「日本公開版」で稼げると読んだのでしょうか。

 しかし、アマゾンのレビューなどを見ると、パラマウントのDVD、ブルーレイに関しては、これまでその中身の出来や構成、また文字どおりの「手を替え品を替え」の製品発売について、一部マニアからは非難の声が挙がっています。

 気になるのは、いずれもオリジナル版をメインに位置づけた収録で、「日本公開版」はあくまで「特典映像」だということ。

 パラマウント側にしてみたら、「あんまりキレイな映像じゃないけど、そこんところはオマケの『特典映像』だからってことで、ひとつヨロシク」みたいな感じかもしれないが、ファンのこちら側としては「オリジナル版はもうDVDでも見てるからどうでもいい。ブルーレイで少しぐらい鮮明な映像になってもそんなの関係ない。それより「日本公開版」こそを一番キレイな映像で見たい。日本公開版をきっちりデジタルリマスターしてほしい」なのです。

 「ドラゴン怒りの鉄拳」のブルーレイは、この彼我の意識のギャップが埋まった製品となるのでしょうか。少なくとも「香港国際警察」の「日本公開版」の特典映像は「HD画質ではなくSD画質だ」ということをパラマウントに電話して聞き、少々がっかりしました。

 私がよく行きますtera-chanさんのブログ「我愛香港電影」には、パラマウントの製品についてこんな記事があります。
 http://d.hatena.ne.jp/tera-chan/20120925

 
 製品がリリースされたあとの、ファンの方々の評価に注目したいです。

 ちなみに今回私は「香港国際警察」とは別に「ドラゴン怒りの鉄拳」と「死亡遊戯」をアマゾンに予約しました。うまくパラマウントの商売に乗っけられました。
 
 製品の詳しい情報は amazon

 私などは、日本公開版をどうせ「特典映像」の位置づけで収録してしまうのなら、日本語字幕がフィルムに焼き込まれた「当時の劇場公開版そのもの」の映像を収録してほしいとまで思ってしまいます。

 追記:こちらの「熱い」記事を見つけましたので載せておきます。

 ブログ「超級熱龍」
 http://blog.goo.ne.jp/dragonfever1127/e/2aceccf58cdd342eccc02067353b40b3

 http://blog.goo.ne.jp/dragonfever1127/e/1475768fea0ad1fa9673d5c4d9003d9a

 http://blog.goo.ne.jp/dragonfever1127/e/7a074ade66235bc40c74391cd7582dda

 http://blog.goo.ne.jp/dragonfever1127/e/8fb3c8b1840bd46ba4517983c52a89a9

 パラマウントの製品解説ページ(ここで作品名で検索できます)
 http://dvd.paramount.jp/search/detail.php?id=7973

 お暇な方はこちらの記事もどうぞ
 http://kengshow.com/2010/08/post_490

 当時のサントラ盤を聴いていた人には涙モノの映像
 http://youtu.be/_NqaS9sAIE8